ボーンコレクターを読んでいて思ったことを、ちょっと補足。
この本が書かれたのが1997年だから、かれこれ15年くらい経つことになる。
この本の書かれた時点ですら、科学捜査のレベルはかなりのものだから、今はもっとすごいことになっているのだろう。
指紋、DNAなどの生体情報、衣服の繊維、足跡など、犯人を特定する技術は日々発展している。
人の心の中を見ることはできない。
だから、外部に現れた痕跡を集め分析することで、人の心や行動パターンを読み込むことになる。
このような技術は犯罪防止や犯人の特定からは、非常に有効である。
しかし、一方で個人を特定できる生体情報が、一箇所に集められ管理されれば、ほとんどプライバシーが無くなってしまう。
特に、携帯電話のGPSと合わせれば、個人の行動がほぼ監視可能となる。
また、グーグルは私企業であるが、便利な機能をフリーにして、検索という個人の情報を収集・管理している。
検索ワードから、個人の心の中(趣味、性的趣向、欲望など)を読み取り、広告に利用している。
これから先、お金がすべて電子マネーになったとすれば、その履歴から消費活動が読み込まれ利用される。いわゆるライフログというものだ。
個人の生体情報(指紋・DNA)、ビルや街に設置された監視カメラ、携帯電話のGPS、電子マネー、パソコンや携帯に残された検索履歴などを、国が一括して管理・監視すれば、私たち個人のプライバシーなんかほとんどないと同然である。
例えば、生活保護受給者が電子マネーでパチンコをすれば、一発でバレるだろうし、また、子供に対する性的虐待をした犯人をパソコンの検索から絞り込むことも可能だ。
電子マネー、GPS、監視カメラの情報をつなぎあわせれば、何時何分に何をやっていたかすべて筒抜けである。
このように個人の情報を収集し分析する思考は、非常に西洋的である。ちょっと日本人にはピンとこない。
多分、キリスト教の懺悔・告解のシステムに由来しているのかもしれない。
つまり、表向きは魂の救済を目的としながら、信徒に自分の犯した罪や自分の性的欲望を告白させ、その秘密の情報を収集する。そのことによって、信徒をコントロールするのである。
秘密の情報が、権力側の統治にとって有効だということを、知っているのである。
それに対し、日本人は、情報の有用性の認識が低い。だから、コントロールされる側に回ってしまう。
ただ、こういう時代になったら、開き直ることも大事かもしれない。
どういうことかといえば、結局、恥ずかしくて知られたくないのは、自分のエロの趣向だから、それをオープンにしていくのである。
例えば、よく検索するワードが、巨乳とか、◯だしとか、フェ◯とかだったら(私もそういう言葉をよく検索する)、別に隠さないことである。
そうすれば、コントロールされる可能性も低くなる。タブーをなくしていくということである。
最後はしょうもない話になってしまった。すいません。
ボーンコレクター読了。
いつか読もう読もうと思っていた本である。予想通り、面白かった。
犯罪捜査の細部が詳しく書かれていて、その辺に興味のある人は、いいと思う。
私はそこまで興味がないので(笑)、あまりに細かいところは読み飛ばした。
この本も、先が気になって読み出したら止められない系の小説だ。
作品の中に謎と緊迫感がにうまく取り込まれている。
また、個性的なキャラクターがしっかり描かれていて、人間関係・信頼関係の変化も楽しめる。
最後は、あっと驚く展開で、かつホッとするいわゆるハッピーエンド的結末である。
ちょっと前に読んだクリムゾンの迷宮と対照的だなぁと思った。
というのも、クリムゾンの迷宮は、ちょっとだけ胸がしめつけられるような切ない結末だからだ。
この結末は、西洋と日本の昔話に由来するのかもしれない。
西洋の昔話は、最後に王子様をお姫様がくっついて、めでたしめでたしのハッピーエンドの結末が多い。
これに対して、日本の昔話は、雪女や鶴の恩返しみたいに、うまくいっていたのに、結局、別れてしまい、ちょっと切なく哀しい話が多い。
このような昔話の結末の違いが、現代の小説の結末にも影響している。
まぁ、どちらも悪くないが。