1960年代のアメリカでの黒人差別の実態を描いた、実話をもとにした映画。グリーンブック (映画) - Wikipedia
主人公はイタリア人の中年男。美しい妻と一人息子を愛する男なのですが、働いていたキャバレーの用心棒?の口が、改装のため途切れます。ギャングとしての働き口はあるのですが、それはしたくない。
ようやくありついた仕事は、黒人のピアニストの運転手。主人公は大の黒人嫌いなので躊躇するものの、ほかにうまい口はなく、このピアニストの演奏旅行に、運転手兼用心棒兼マネージャーとして同行することになります。
演奏旅行先はアメリカ南部。いくつかの州にまたがって演奏を続けます。
ピアニストは、ドン・シャーリー。実在の人物で、学位を取得し、ピアニストとしては最高位にあったらしい。南部へのツアーは、彼があえて望んだもの。案の定、彼は特別の賓客待遇で金持ちたちの音楽会に招かれ、熱烈な歓迎を受けるのですが、演奏会以外ではただの黒人として扱われ、トイレもは外にある粗末な仮小屋のような場所で用を足すよう指示される。高級ホテルでの演奏会の前に食事をとろうとしても、ドンだけ許されない。車での移動をしている最中に、警官に呼び止められ、黒人は夜間外出禁止という規則を犯したかどで逮捕されます。
金が目的で彼に同行した主人公は、徐々にピアニストに親しみをおぼえ、差別の実態のすさまじさも肌身にしみるようになります。二人はそれぞれがお互いを理解し、次第に打ち解けていきます。
この映画はアカデミー賞作品賞を受賞したそうですが、批判も多く、その批判は「(主人公のイタリア人が)「黒人を差別から救う救済者」として誇張された伝統的すぎるキャラクターだったこと」が理由だろうと上記ウィキペディアに書かれています。
たしかに、ハートウォーミングな、のんびりした映画といえなくもないのですが、二人が体験した当時の黒人差別のつじつまのあわなさにはおどろきます。
徹頭徹尾、黒人を軽蔑し付き合わない、というならはなしはわかる。そうではなくて、ドンのピアニストとしての技量には称賛を惜しまないくせに、差別の「ルール」に従うことに何の違和感も持たない白人の金持ちたち。この矛盾に気が付かないことにぞっとします。
「グリーン・ブック」とは、黒人専用のホテルなどを記した旅行ガイドブックの名前。ドンが各地で引くピアノ曲は、毎回ジャンルが変わります。たぶん、ドンの気構えとか心の内とかを表しているのではないかなと思いました。この日はどんな曲を弾くのだろうかと、それもちょっとした楽しみでした。