みよし在住のアロマアドバイザー原祐子さん主宰の無添加生活Clubが企画した、こだわりの調味料工場ツアーに参加しました。訪問先は、西尾市のほうろく屋菜種油の工房と、碧南市の三河みりんの工場。ほうろく屋は昨年に続き、二回目の訪問です。
工房主の杉崎学さんは、10数年前、西尾に最後に残っていた油屋さんから教えを受け、その油屋さん所蔵の昭和20年代の機械をゆずりうけて開業しました。
西尾のあたりは菜の花の産地で、昔から地域に数軒の油屋があり、農家の人たちは自分が育てた菜の花の種を油屋に持っていってしぼってもらい、一年分の食用油にしていたのだそうです。ところが、昭和30~40年代くらいから、薬剤抽出してしぼった安い油が出回り、昔ながらの製法で作った油は一気に売れなくなりました。20数軒あった西尾の油屋は、杉崎さんが学んだ1軒だけになっていました。その一軒も継ぐ人はおらず、いずれ廃業と決まっていました。
それまでご自分も周囲も考えてもいなかった仕事を始めた杉崎さんに、周囲は猛反対。油で食べていけるわけがない、というのが反対の理由でした。でも、杉崎さんの最終目的は油屋の復興ではなく、社会生活にうまくなじめないでいる、子供たちや若者たちの居場所づくりにありました。
その数年前から始めた、ご自宅の裏山の開墾。子供たちや若い人たちが集まり、灌木を伐り、草を刈り、畑を作って野菜作りを始めました。そして当時は珍しかったマルシェも開催。周辺の高齢者たちにもどんどん参加してもらい、子供や若い人たちとの交流を促しました。この居場所づくりの中核として、菜種油の工房の設立をかんがえたのです。
とはいえ、高い油はなかなか売れるものでなく、苦労は続いたようです。でも、数年前から潮流が変わってきました。値段よりも質を大事にする人たちが増えてきたのです。私がみよしのマルシェに出店したとき、一緒に出店していた男性からこの油の良さを力説され、購入したのは、たしか4年ほど前でした。その後、岡崎の自然食品店ヘルシーメイトでのアンティマキの講習会には、お店の希望で、この油をスコーンやパンに使っています。焼いた時の風味はほかの油とは格段の差。現在は、商品にもしています。
さて、工房見学の最初にみせていただいたのは、とうみです。届いた菜種を天日干ししたあと、この機械にかけます。すでに農家で選別は終わっているのだそうですが、杉崎さんはさらに細かくえり分けます。重い種は食用油に、軽い種は機械油に。森で木を伐るときに使うチェーンソーの油は、ふつうは石油。伐れば周囲に飛び散り、微生物をころします。でもこの油なら、もとは植物なので栄養にこそなれ、死滅はさせません。
次の工程は、焙煎。油絞りのうち最も大事な工程がこれ。使っているのは昭和20年代に杉崎さんのお師匠さんが考案して発注したほうろく釜です。このほうろくが、こちらの菜種油の要といえる道具なので、工房の名前をほうろく屋としたのだそう。
火力は裏山でみんなが切った間伐材です。火力を調節しながらの焙煎。釜の縁でつぶしては焙煎具合を確かめながらいりつづけます。おおかたの圧搾菜種油も、同じようにこの焙煎をおこなうのですが、機械で一気に焙煎するため、焦げつく種も出てきます。均一でない種を絞りやすくするため、こののち、湯洗いという工程を取るのが一般的。でも、杉崎さんは、ここで手間を惜しまず湯洗いせずに焙煎を続け、絞りの段階に入ります。
こちらが絞りの機械。こちらも古い道具です。まだ修理できる方がみえるので、直し直し使っているそう。ここで油とかすに分かれます。かすは緑色っぽいグレー。ホームセンターで売っている油粕は茶色。色の違いが成分の違いのようです。こちらの油粕は、EMたい肥の材料にもなるし、米ぬかと混ぜればいい肥料に。盆栽好きのかたには、重宝されている肥料だそうです。
絞った油は缶に入れて自然沈殿させます。生のままの油と加熱する油と両方の商品があるのですが、いずれにしろ、一般のサラダ油なる油とはちがって、こちらの工程は素人でも十分わかるシンプルさ。安心できます。
搾りたての油も、飲ませてもらいました。なんと菜種の花のお浸しの味がしました!
ところで、今回杉崎さんに聞いて初めて知ったのですが、こちらの油の原材料表示は、「食用なたね油」となっています。名称も「食用なたね油」。普通に考えたら原材料は「国産菜種」となるはずなのに、このように書けとの指示があったとのこと。名称と原材料が同じとは、奇怪な話です。スーパーなどに並んでいる薬抽出の安い油の原材料も多分、同じなのでしょう。薬の表記はどこまで義務があるのかも気になります。
見学の最後は、ほうろく菜種油をつかった丸干しいわしのアヒージョのふるまい。前回もいただいたのですが、これが絶品。今回ふたたび参加したのは、またアヒージョにありつきたいという欲望も手伝っていました。写真を撮りそこなったのですが、近くの漁港で水揚げされたマイワシを昔ながらの方法でえらにくし刺しをして天日干しした丸干しイワシを、たっぷりのほうろく油で煮ただけのもの。味付けはなく、丸干しの塩気だけ。やっぱりおいしかった!
同行した友人が「「これまでほうろく屋の油は高い」と思っていたけれど、高くなるにはそれだけの理由があることがよくわかった」と言いました。同感です。
工房主の杉崎学さんは、10数年前、西尾に最後に残っていた油屋さんから教えを受け、その油屋さん所蔵の昭和20年代の機械をゆずりうけて開業しました。
西尾のあたりは菜の花の産地で、昔から地域に数軒の油屋があり、農家の人たちは自分が育てた菜の花の種を油屋に持っていってしぼってもらい、一年分の食用油にしていたのだそうです。ところが、昭和30~40年代くらいから、薬剤抽出してしぼった安い油が出回り、昔ながらの製法で作った油は一気に売れなくなりました。20数軒あった西尾の油屋は、杉崎さんが学んだ1軒だけになっていました。その一軒も継ぐ人はおらず、いずれ廃業と決まっていました。
それまでご自分も周囲も考えてもいなかった仕事を始めた杉崎さんに、周囲は猛反対。油で食べていけるわけがない、というのが反対の理由でした。でも、杉崎さんの最終目的は油屋の復興ではなく、社会生活にうまくなじめないでいる、子供たちや若者たちの居場所づくりにありました。
その数年前から始めた、ご自宅の裏山の開墾。子供たちや若い人たちが集まり、灌木を伐り、草を刈り、畑を作って野菜作りを始めました。そして当時は珍しかったマルシェも開催。周辺の高齢者たちにもどんどん参加してもらい、子供や若い人たちとの交流を促しました。この居場所づくりの中核として、菜種油の工房の設立をかんがえたのです。
とはいえ、高い油はなかなか売れるものでなく、苦労は続いたようです。でも、数年前から潮流が変わってきました。値段よりも質を大事にする人たちが増えてきたのです。私がみよしのマルシェに出店したとき、一緒に出店していた男性からこの油の良さを力説され、購入したのは、たしか4年ほど前でした。その後、岡崎の自然食品店ヘルシーメイトでのアンティマキの講習会には、お店の希望で、この油をスコーンやパンに使っています。焼いた時の風味はほかの油とは格段の差。現在は、商品にもしています。
さて、工房見学の最初にみせていただいたのは、とうみです。届いた菜種を天日干ししたあと、この機械にかけます。すでに農家で選別は終わっているのだそうですが、杉崎さんはさらに細かくえり分けます。重い種は食用油に、軽い種は機械油に。森で木を伐るときに使うチェーンソーの油は、ふつうは石油。伐れば周囲に飛び散り、微生物をころします。でもこの油なら、もとは植物なので栄養にこそなれ、死滅はさせません。
次の工程は、焙煎。油絞りのうち最も大事な工程がこれ。使っているのは昭和20年代に杉崎さんのお師匠さんが考案して発注したほうろく釜です。このほうろくが、こちらの菜種油の要といえる道具なので、工房の名前をほうろく屋としたのだそう。
火力は裏山でみんなが切った間伐材です。火力を調節しながらの焙煎。釜の縁でつぶしては焙煎具合を確かめながらいりつづけます。おおかたの圧搾菜種油も、同じようにこの焙煎をおこなうのですが、機械で一気に焙煎するため、焦げつく種も出てきます。均一でない種を絞りやすくするため、こののち、湯洗いという工程を取るのが一般的。でも、杉崎さんは、ここで手間を惜しまず湯洗いせずに焙煎を続け、絞りの段階に入ります。
こちらが絞りの機械。こちらも古い道具です。まだ修理できる方がみえるので、直し直し使っているそう。ここで油とかすに分かれます。かすは緑色っぽいグレー。ホームセンターで売っている油粕は茶色。色の違いが成分の違いのようです。こちらの油粕は、EMたい肥の材料にもなるし、米ぬかと混ぜればいい肥料に。盆栽好きのかたには、重宝されている肥料だそうです。
絞った油は缶に入れて自然沈殿させます。生のままの油と加熱する油と両方の商品があるのですが、いずれにしろ、一般のサラダ油なる油とはちがって、こちらの工程は素人でも十分わかるシンプルさ。安心できます。
搾りたての油も、飲ませてもらいました。なんと菜種の花のお浸しの味がしました!
ところで、今回杉崎さんに聞いて初めて知ったのですが、こちらの油の原材料表示は、「食用なたね油」となっています。名称も「食用なたね油」。普通に考えたら原材料は「国産菜種」となるはずなのに、このように書けとの指示があったとのこと。名称と原材料が同じとは、奇怪な話です。スーパーなどに並んでいる薬抽出の安い油の原材料も多分、同じなのでしょう。薬の表記はどこまで義務があるのかも気になります。
見学の最後は、ほうろく菜種油をつかった丸干しいわしのアヒージョのふるまい。前回もいただいたのですが、これが絶品。今回ふたたび参加したのは、またアヒージョにありつきたいという欲望も手伝っていました。写真を撮りそこなったのですが、近くの漁港で水揚げされたマイワシを昔ながらの方法でえらにくし刺しをして天日干しした丸干しイワシを、たっぷりのほうろく油で煮ただけのもの。味付けはなく、丸干しの塩気だけ。やっぱりおいしかった!
同行した友人が「「これまでほうろく屋の油は高い」と思っていたけれど、高くなるにはそれだけの理由があることがよくわかった」と言いました。同感です。