阪神淡路大震災のおり、私は京都の集合住宅に住んでいました。そのときは大きな揺れを感じただけで事なきを得たのですが、都市で被災することの怖さをまざまざと思い知りました。
なかでも最も心配になったのが、トイレ。避難所に行かなくて済んだとしても、水は配給され、ベランダで七輪で炭をおこして煮炊きができたとしても、下水道が寸断されたら、どうやって流していいかわからない。自分の自由になる土地がわずかでもあればなんとかなるけれど、コンクリートの駐車場しかない場所で、いったいどうするんだろう。
こちらに来て、その心配はいちおうなくなりましたが、いざというときのために、敷地内のどこかに簡易のトイレを作れたらいいなと思っていました。
頻発する地震の折のためだけでなく、敷地内でワークショップなど催す際に、トイレがあったらたすかる。それも、なるべく自然にかえる形がいい。
先月初め、松平地区で、「縄文トイレワークショップ」がある、と友人から聞いたので、「これだ!」と思ってすぐに申し込みました。
さて、このトイレ、地面に穴を掘って、小石を詰め、一番上に燻炭をたっぷり撒いてその上に、ペール缶を置いただけのいたってシンプルな代物。
教えてくださったのは、この方。佐賀からいらした長介さん。
参加者が持ち寄った小石とその辺の小石。
便座は木製ですが、なんでもOK. 介護用のプラスチックの便座でも間に合いそう。
穴を掘り始めます。だいたい70cmから1mくらい。
途中結構大きな石があったため、子どもだけでやり遂げることはできなかったけれど、相当の深さまで、子どもだけで頑張ってた。
大きめの石も小石も投入。
燻炭を広げます。
最後は細かい炭をしっかりのせます。
底と側面の半分に穴をたくさんあけたペール缶を置き、便座を載せて完成。
掘っ立て小屋を建ててもいいし、簡単なテントを置いてもいい。できました!
このトイレは、おしっこと便を別々にするところがポイント。おしっこは、この間の穴から出ていきます。
側面の半分だけに穴をあけるのは、前側におしっこが当たっても飛び散らないようにするため。穴の中の小石にじわじわ沁みていきます。
便は、用を足したら燻炭を撒いて、そのうえに枯葉を置きます。それで、もう全く臭くはないそう。枯葉は次に用を足す人へのエチケット。お次の方どうぞ、という印だそうです。で、ある程度たまったら、堆肥箱にもって行き、草と混ぜれば立派な堆肥が出来上がる、という仕組みです。構造も考えもシンプルです。う~ん、できそう。
お昼は持ち寄りおかずで。参加者が多かったので、おかずもたくさん。おいしくいただきました。
教えてくださった長介さんは、月7万円の年金生活をなさっているそうですが、それで貯金ができているという暮らし方をなさっています。トイレはこの縄文式。飲み水は、大寒のころ、タンクにたくさん山の湧水を汲んできて、その水をずっと使っているそう。洗濯や風呂は雨水をろ過したもの。電気はほとんどろうそくで賄っているとか。そのろうそくは、葬儀屋で不要のものをもらってくるそうです。一度使ったらそれで捨てるしかないろうそく。使ってもらえたら、葬儀屋もうれしいと思う。ユーモアたっぷりの彼の話は興味深く、おもしろい。いつかまた、何かのワークショップでこちらに来られることがあれば、また参加したい。