一昨年まで、毎年春と秋の二回、雑草料理研究家の前田純さんにお越しいただいて、わたし宅の野原で草を採取し、どんぐり工房で調理して彼のお話を聞く会を催していました。
でも昨年は、パンデミックのために中止。今年はどうしようか迷いましたが、調理を屋外のハウスポニーで行うこととして人数を限定し、開催することにしました。
来月の開催を前に、きょうは、前田さんにきていただいて、下見をしてもらいました。その下見の最中、彼が見つけたのがこの草。茜です。
写真中央のとがった葉っぱ。葉の付き方が特徴的で、輪生というのだそう。この根から赤い染料がとれるのです。これまで、一、二度、地元の人から苗を頂いて植えたことはありますが、みなすぐに草に負けて絶えてしまいました。
前田さんには、4年ほど前からこの場所には来ていただいていて、どこにどんな植物があるか、ほぼご存じ。でも、この茜は、初見。ということは、一昨年秋からこの春までの1年半の間に、どこかからやってきたらしい。
あたりを見回すと、この日本茜はあちこちに生えていて、いくつかの群落をなしています。茎に鉤づめみたいなものがあって、その爪で、周辺の雑草を抑えて生長するのだそうです。だから、周りの草はある程度必要みたい。すっかりは刈らずに、適度に残して日が当たるようにしておきました。シカが食べるそうなので、群落の周りに竹の先っぽの枝を置いておきました。こうすれば、シカは危険を察知して近寄らないでいてくれるかも。
ずっと以前のことですが、京都で、茜ばかりを染めている染色家にお会いしたことがあります。彼女の話では、日本茜の根っこは、西洋茜やインド茜は、およそ10分の1の太さだそう。だから、染めるときの量は10倍必要ということになる、とか。そういうこともあってなのか、いま染料店で売っている茜は西洋茜かインド茜がほとんどのはず。日本茜で染めている染色家はかなり少ないだろうと思います。
これが日本茜の根。ほんのり茜色です。
こちらに来た頃、地元の方に教えてもらって、家からほど近い城ケ山のふもとまで採取に行ったことがあります。掘った根を洗い、数日乾かしてから煮だしたように記憶しています。取れた染料はわずかでしたが、ちゃんと赤い色が出ました。
いまある群落を大事にしてそだててやれば、いつか自宅で採取した茜の染めができるかもしれません。そうおもうと、わくわくします。一見、ただの草地に過ぎない場所ですが、消えた植物もあれば生まれた植物もあり、いろいろ起きているのだなということを改めて感じました。こういうの、しみじみたのしい。