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アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

マンガ「フイチンさん」と「フイチン再見!」

2015-08-14 15:01:40 | 映画とドラマと本と絵画
    子供のころ、とても好きだったマンガがあります。上田としこ作の「フイチンさん」。20年前に復刻版が出て、全巻購入しました。

    「フイチンさん」は「少女クラブ」に連載されていたそう。でも、当時、私宅ではマンガ雑誌は買ってくれなかったので、たぶん、どこかの家で読んだものとおもわれます。そういえば、楳図かずおの怖いマンガも、同じくどこかで読んだ記憶があります。

   「フイチンさん」は、戦前戦中の満州が舞台。大富豪の劉家の門番の娘が、主人公のフイチン。明るくて正義感の強い彼女の周りには、中国人をはじめ、日本人、ロシア人などの友だちがいっぱい。最も仲のいいのは、劉家のおぼっちゃまくん。二人の掛け合いが楽しかった。満州に当時住む人たちが、国籍を越えて親しく付き合っていた様子が伝わります。

    購入して初めて全巻読了し、この漫画の素晴らしさを再認識。絵のセンスも抜群で、洗練されているし、話も面白い。時代の古さを感じさせません。知り合いの女子中学生や女子高校生にすすめると、みな一様に大好きになりました。何度も借りに来る子もいたほど、いまでも魅力的なマンガです。

     さて、この「フイチンさん」の作者・上田としこの伝記漫画が2年前、発売されました。「フイチン再見!」。ただいま、第5巻まで出ています。作者は村上もとか。彼のマンガを読んだことはありませんが、しっかりしたデッサンで好感の持てるタッチです。第1巻の冒頭には、彼が最初に「フイチンさん」を読んだ時の驚きが描かれています。ほぼ私と同世代らしい彼の感じた衝撃には、共感するものがあります。

     上田としこは、大正年間生まれ。生まれは東京ですが、生後40日にして満州のハルピンへ。実業家の娘として何不自由なく育った彼女ですが、他の兄弟以上に、この地で、さまざまの階級の、年齢もいろいろの、日本人、中国人、亡命ロシア人、ユダヤ人とつきあいます。後年、この経験が「フイチン」誕生の基礎になります。

     社会勉強のため、親の反対を押し切って満鉄に入社。女子社員の待遇改善に奔走したり。志願して奥地の仕事に従事したりと、彼女のバイタリティには驚かされます。その後、新聞社に入社。そしてこの地で終戦を迎え、ソ連軍の入城を目の当たりにし、さらに中国の内戦に巻き込まれていきます。

     長谷川町子と並ぶ、日本初の女性漫画家の特異な一生と、彼女の生きた時代の雰囲気がよく伝わるマンガです。次の巻の発行が待たれます。    

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