香港が舞台の現代劇。「日帝時代の生まれ」という桃さんは子供のころから、ある金持ちの家の使用人として働いている。時代が変わって、雇い主の家も大きく変化しているらしいのですが、桃さんは香港でマンション暮らししている当家の息子のために、家事全般をこなしています。桃さんのしあわせ - Wikipedia
映画関係者らしい息子は、桃さんがきれいに洗濯してクリーニング屋から戻ってきたかのように丁寧にたたんであるシャツを着ることにも、桃さんが作った多彩の料理にも、一つ一つ感謝するとか驚くとかほめるとか、そういうことは一切なく、ただたんたんとあたりまえのように受け取っています。桃さんも、彼の生活にときには干渉しますが、台所で自分は立って食べ、決して雇われ人としての分を外すことはありません。
息子はあるとき、桃さんを連れて映画の試写会へ。彼女は精一杯おしゃれをしているのですが、それが上着もアクセサリーもすべて「奥様」たちからのおさがりらしいと、なんとなくわかる。桃さんのはにかみ方がかわいい。桃さんはアメリカに住んでいる雇い主一家の子供たちにも人気があるらしい。老齢となった彼女の面倒を見るように、というのは死んだこの家の主からの遺言です。
桃さんには血縁はおらず、つながりはこの家の家族だけ。でも、どちらの側も、雇人⇔雇われ人の位置から外れるつもりもなく、取っ払おうとすることもありません。この淡々とした関係が「桃さんのしあわせ」なのだろうな。
脳梗塞か何かで倒れた桃さんは、養護老人ホームへ移ります。しばしば面会に来る雇い主の息子は、彼女には自慢の種です。息子にとって桃さんは実の母親より気やすい仲のようなのですが、そのことはさしてこだわりを持っては描かれず、ただ、死期がちかづいている老メイドを、やさしく見守る様子がつづられます。
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