未完の長期計画

神戸の自宅からだと片道1.5時間。

この春、通勤がたいへんだからと
宝塚に小さな部屋を借りました。

大家さんから格安で貸していただいた
古ーいアパートの１室。

「おばあちゃんの家に来たみたい」
「ははぁ…へえ…」

訪ねてきた人はそんな感想を口に、
お茶もそこそこに
そそくさと帰り支度を始めます。

まぁ、それほど年季の入った建物なのですが、
本人はというと、窓から山と川が見えること、
広いことが大いに気に入っています。

で、私、古い家に住んだら
１度やってみたかったことがありまして、
それは――漆喰の壁塗り。

断られるかなぁと思いつつ、
大家さんに尋ねてみました。

すると

「煮るなり焼くなり好きにしてや。
　あ、焼いたらアカンか、あはは」

と、あっさり快諾！

お言葉に甘えて、
壁を空色のペンキで塗ってみたり、
漆喰を波打たせてみたり、
かなり好き勝手に手を加えています。

とはいえ、仕事の合間の休日の、
さらに遊びの合間にぼちぼちやってるので、
まだまだ道半ば。

春から初めて半年。
銀杏が見事に色づく季節になって、
ようやく１室の３面の壁塗りが終了。

遅々として進まぬ様子を見た知人からは

「百年計画でやるつもり？」
　ガウディの聖家族教会みたいに」
　
とからかわれる始末。

ふふん、ほっといて。

鬼才ガウディによるバルセロナの異形、聖家族教会。
他の誰にも分からずとも、
ガウディの目には百年後の姿が見えていたのでしょう。

ひるがえって、我が新居（古いですが）。
全体のテーマは北欧ノルウェー、漁村の古民家。

台所の棚はブルーに
こっちのドアは真っ赤に、
この柱は限りなく黒に近いこげ茶に…と
私の目にもガウディのように
理想のマイルームがしっかり見えています。

目指せ、３年計画！
求む、腕のいい職人！

…まぁ、自力でぼちぼちやります。


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