銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

とりあえず10回を目標に

2011年04月26日 | のほほん同志Aの日常

「本当に良いものは100回見ないと。
 1回や2回じゃ、何も分からない」

私の古い友人はよくそう言って、
繰り返し同じビデオを何度も見ていました。
同じ本を何度も読んでいました。

そう?と受け流していました。
まだ読んでいない本、
まだ見ていない映画が世界にはあふれているのに。

でも少し、考えを改めました。

先週末、前回たいへん好評で
アンコールいただいたツアーに
4カ月ぶりに再び行ってきました。
大阪の柏原市へと、河内ワインの産地を訪ねる小旅行です。

ワイナリーの社長の小気味良いお喋りと
これでもか!とばかり出てくるワインの数々は前回どおり。
2回目とあって知らず知らず膨らみがちな期待にも
十分応えてくれます。

…印象が大きく異なったのは、
午前中に訪ねた司馬遼太郎記念館でした。

『21世紀に生きる君たちへ』

1996年に亡くなった司馬遼太郎さんが
小学校6年生の教科書に載せるために書いた短い文章です。
司馬遼太郎記念館を訪れると、
最後にこの文章に突き当たるような展示になっています。

実はこの文章は、以前にもこの欄で紹介しました。
つまりその時も司馬氏のほとばしるような歴史愛に
へーっとは思ったわけですが、
今回はえーっと驚愕する思いでした。

それは例えば、こんな言葉です。

「自然こそ不変の価値なのである。
 なぜならば人間は空気を吸うことなく生きることができないし、
 水分を取ることがなければ乾いて死んでしまう」

「――人間こそ、いちばんえらい存在だ。
 という、思いあがった考えが頭をもたげた。
 二十世紀という現代はある意味では、
 自然へのおそれがうすくなった時代といっていい。」

「同時に人間は決しておろかではない。(中略)
 おそらく、自然に対しいばりかえっていた時代は、
 二十一世紀に近づくにつれて、終わっていくに違いない」

「二十一世紀にあっては、科学と技術がもっと発達するだろう。
 科学・技術が、こう水のように人間をのみこんでしまってはならない。
 川の水を正しく流すように、君たちのしっかりした自己が、
 科学と技術を支配し、よい方向に持っていってほしいのである」

まるで今の状況を見据えているかのような司馬氏の考察。
でも驚いたのは、そのことにではありません。

『二十一世紀に…』の中ほどを占める
この自然と人間に関する部分、
前回はまったく私には響かなかったのです。

「当たり前のこと」、と思いましたし、
「言い古されたこと」、とも思いました。

でも
それを当たり前と思うのなら
その考えにもとづいてのふるまいだったか
…というと即座に否で。

言葉だけ知って、知識だけかじって、
分かったつもりで、まったく身についていなかったのですね。

うーん、やっぱり、100回読みますか。

ちなみに。
ようやく5回ぐらい読んでみた
『二十一世紀に生きる君たちへ』

最後を締めくくる司馬氏の呼びかけには、
毎回、胸がつまります。

「君たち。
 君たちはつねに晴れあがった空のように、
 たかだかとした心を持たねばなならない。
 同時に、ずっしりとたくましい足どりで、
 大地をふみしめつつ歩かねばならない。
 
 私は、君たちの心のなかの最も美しいものを見つづけながら、
 以上のことを書いた。
 書き終わって、君たちの未来が、
 真夏の太陽のようにかがやいているように感じた」



▼ツアー報告「1河内の秘仏・ご開帳」はコチラ
http://ameblo.jp/arailuka/day-20101110.html

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