まずい、ピーターをネットに入れたところでアンクル・チャチャが強い口調で文句を言ってきた。ピーターには悪い事をしてしまった。ちょうどショッカンが粉の用意をしていたしタイミングが悪かった。
移動売店での買物は石鹸、歯磨きそれとタオルだ。数日後にはワード変更があるだろうそれまでの我慢だ。フィリップスのグループに入ろうか、それしかないだろう。だがそれもきついだろうな。外で自由に生活している訳ではないのだから辛抱しなくっちゃ。
1月2日(月曜日)
朝9時から10時30分まではクラスだ。アミーゴが許可を得て始めたスペイン語のクラスに出席している。陽当りの良い場所に黒板と莚を持って行って学習は始まる。アミーゴは英語が良く理解できない。授業を進めるのはインド系ポーランド人のカマルだ。
ERES ESPANOLA? Are you Spanish?(fem)
ES USTED ESPANOL? Are you Spanish?(m)
この日のノートは2ページを使っていた。スペイン語に対応する英文を黒板に書く。スペイン語の発音はアミーゴの仕事だ。単複、性別変化などが書かれている。毎日10個くらいの新しい単語が出された。スペイン語を習い始めるとスリランカ人は直ぐスペイン語でアミーゴに話し掛けた。10日もするとアミーゴとの口喧嘩を口ごもりはするがスペイン語で遣り合った。語学の学習能力は高い、生活が掛かっているからだろう。この時間、朝吸ったスタッフの効きが出てくる頃でぼくは夢心地で度々注意をされた。
クラスが終るとどうしてもビリを一服したくなる。水場の裏通りに竈があり置き火が残っていてそれからビリに火を点けていたがいつからだろう消されたままだ。禁止になったのかもしれない。開錠中に隠し火を持っているのはBバラックの監房内だけだ。薄暗い真中の通路を挟んで両側に各5つの監房がある。デリー中央第1刑務所内のアフリカン・ドラッグ・シンジケートはここにある。その実態をぼくはまだ知らない。