10月29日の一面トップは、6段組の千葉知事選の記事でした。特大の活字が、私の視線を釘付けにしました。
「鈴木大地氏 擁立困難」「自民、森喜朗氏が反対」「国会議員あす協議、候補探す場に」
どうして、この場面で、森元総理が出てくるのか。思ってもいない展開になりました。10月28日に、森氏は渡辺会長と都内で意見交換し、鈴木氏の出馬に反対する考えを伝えたと言います。何度記事を読んでも、森氏の考えが理解できませんでしたが、今でも不可解の一語です。
森氏の動静になりますと、千葉日報社の手の届かない範疇です。共同通信社の記事であることが、ここで証明されます。
「森氏は、スポーツ界に大きな影響力を持つ。」「氏の反対で、鈴木氏の擁立は困難な状況になった。」「森氏は会談で、スポーツ庁を重視する立場を表明し、」「長官を退任したばかりの鈴木氏が、保守分裂の可能性がある知事選に巻き込まれることに、」「懸念を示した。」
この記事を読んだ時、公明党の影響力が自民党内に浸透している現実を知らされました。森氏はなぜ、スポーツ庁と千葉県知事を天秤にかけるような、おかしな理屈を言い出したのでしょうか。氏は千葉県知事の座を、立憲民主党と公明党に渡すつもりなのでしょうか。私が予想していたのは、正論を述べる千葉県連会長を支援し、「反党行為」を続ける石井氏を、党本部が除名処分にするのではないかという期待でした。もしそうでなければ、他党候補を公然と支援する石井氏は、自民党を離党し、公明党員となるのが、政治家の節操だと考えていました。
しかるに森氏は、スポーツ庁が大切だから、鈴木氏を分裂選挙で傷つけたくないと、およそ元首相と思えない理由で、県連会長に反対します。このような重要問題に、菅総理に無断で、森氏が介入すると思えませんので、賛成か、やむなしの黙認か、そこは分からないとしましても、何かの話があったはずです。
「関係者によると森氏は、鈴木氏が長官の時代から関係が深い。」「県連の一部国会議員らが、鈴木氏擁立に異論を唱える中、」「熊谷氏を推す動きも出て、事実上の分裂選挙になることを懸念したとみられる。」「県連の渡辺会長は、30日の国会議員団会議は予定通り開くと、述べるにとどめ、」「他の県連役員も、詳しいコメントを避けた。」
森氏の横車と、渡辺会長の無念さが伝わる記事です。「公明党の協力無しで、自民党は選挙が戦えない」・・この現実の深刻さを知らされたのは、渡辺会長というより、私自身でした。しかし本当に、自民党は、公明党無しで政権の維持ができないのでしょうか。私は、「国を愛する人々」に問うてみたくなりました。
私を無視するように、共同通信社の記事が続きます。
「自民党内の動きを、注視する構えを取ってきた公明党の県関係者は、」「これまでの報道は、周辺の話ばかりで、」「鈴木氏から、出馬を明示する発言はなかった。」「最終的には、本人が決めることなので、」「本人の言葉を待たないといけないと、指摘した。」
外交には、「他国への内政干渉」という言葉がありますが、公明党関係者の発言は、「他党への内部干渉」にあたります。しかし自民党の議員諸氏は、この点について誰も言及せず、反日左翼紙である共同通信社が、珍しく「両論併記」をしています。最後の文章がそれですが、同時に、自民党県連の最後の踏ん張り、しかも虚しい踏ん張りが伝わってきます。
「自民県連は、『鈴木氏ありき』に、石井参議院議員が異論を出した、」「14日の国会議員団協議の後、22日に県議の議員総会を開き、」「鈴木氏擁立方針に、異論は出なかったとしていた。」
6段組の大きな紙面より、以上要点のみを抜粋しました。翌日からの紙面は、二日続けて6段組のトップ記事で、以後の経過を報じています。記事の中身は転記せず、見出しの活字だけを紹介します。
・10月30日
「鈴木大地氏 出馬断念」「自民、新規擁立は難航」「幹部きょう経緯説明」「森田氏『大変驚いた』」
・10月31日
「候補者選び 仕切り直し」「自民県連、渡辺会長が謝罪」「擁立失敗 広がる波紋」「執行部に批判も『きちんと手続きを』」
十日後の11月10日に、渡辺会長の記者会見談話が掲載されました。氏の話を、箇条書きでお伝えします。
・県連本部の幹部による「4者会議」で、独自候補を擁立する方針を再確認した。
・早期に候補者を選定したいが、現段階ではいない。
・熊谷市長については、党として支持することはない。
・県選出の国会議員に出馬意向を確認したが、手を挙げる議員はいなかった。
・基本的には、議員、首長など、政治家から選びたい。
・森田現知事については、現段階で進退の話はない。
記事の見出しは、「独自候補擁立、再確認」「熊谷氏支持は全否定」となっています。この談話が、渡辺会長の最後の踏ん張りでした。「熊谷氏支持は全否定」・・当然の話です。ついでに、「森氏も、石井氏も全否定」と、氏が言えない言葉を、私が代わりに補足しましょう。
森田知事の進退、新候補者の決定等、記事が続きますが、千葉県以外の方に、これ以上の報告をやめます。「他山の石」として頂きたいのは、公明党との関係です。腹立ち紛れに言って仕舞えば、「自民党は腐っている」と切り捨てたくなりますが、現実の政治は、妥協したり前進したりでしょうから、短気は禁物です。
「猿は木から落ちても、猿だが、議員は選挙に落ちると、ただの人」
こんな言葉がある通り、選挙に勝つため、議員は「なんでもやる」のだと思います。しかし私は、石井議員だけでなく、森氏にも、菅総理にも、問うてみたくてなります。
「選挙に勝つためなんでもやると言っても、保守人の信念まで捨てて良いのですか。」「信念を捨てて得た勝利で、あなた方は愛国の庶民の支持が得られますか。」