3. 「伊藤貫の真剣な雑談 ( 第2回前半 )」 ・・国家の存立を左右する国際政治学の6つのパラダイム ( 概念 )
前回紹介した5人視聴者は文句なしの賞賛ですが、私は氏の説明に引っ掛かっています。息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々には、次の氏の意見が記憶にあると思います。
・占領軍憲法で軍隊を無くされ、日米安保条約で米軍が永久に占領するとなった時から、日本は永久に独立国になれなくなった。
・アメリカは中・露・北朝鮮の3ヶ国が、いかに日本をターゲットにして核ミサイルを増やしても、日本人にだけは核抑止力を持たせないと言う方針を持っている。
つまり氏の説明によると現在の日本は、永久に独立できないアメリカの属国で、アメリカの意向に逆らっては、何もできない植民地です。そうなると、次の説明が矛盾します。
・日本人は日本が、国際政治学の6つのパターンの中のどれを選択しているのかを、ハッキリ知るべきである。それを認識しないと、日本の国家戦略を明確に設定できない。
国際政治学の6つのパターンを知ろうと知るまいと、米国の属国に、独自の国家戦略の設定できるはずがない。日本人にだけは核を持たせないのがアメリカの国策と説明しながら、日本に核武装せよと言う意見はどこから出てくるのか。氏の議論の飛躍は、どこから生じているのでしょう。
・残念ながら日本語という言語では、こういう3段階のレベルに分けて議論するという考え方に馴染まない。
・だからパラダイムレベルの議論はマスコミに出てこないし、政治家も勿論しない。恐ろしいことに外務省や防衛省の人たちも、あまりしない。
・それなら大学でそういう議論がされているかというと、そうではない。私は東大の学生だった時代に4人の先生から国際政治学を習ったが、そのうちの一人は護憲左翼、後の三人は親米保守だった。
・三人のうちの二人は、一人が佐藤栄作首相のブレーン、後の一人が中曽根氏のブレーンだった。この二人は有名人で世間の評判が高かったから、国際政治学を分かっている優秀な人物と思っていた。
・その後東大を卒業してアメリカに来て、二つの大学で国際政治学の講義を聞いて、それからワシントンで外交政策と経済政策の分析レポートを書く仕事を始めた。
・この時、どうも日本の大学で教えている国際政治学とアメリカの国際政治学の質が違うのではないかと思った。
・東大の先生たち、保守派の先生たちの意見を当てはめていくと、彼らは、国際政治学ではうまく説明できないレベルの政策設定や議論をやっているに過ぎないと思うようになった。
今日まで私は、日本をダメにしている元凶を反日左翼学者にだけ置いて来ましたので、保守派の学者に焦点を当てる氏の意見が新鮮に聞こえます。戦後の大学では反日左翼教授が幅を利かせているとばかり思っていましたが、別の事実を氏が教えてくれます。知らないことを教えてくれる人物は、「ねこ庭」では先生ですから、話を聞かなくてなりません。
・日本の保守派の政治学者、それも総理大臣のブレーンと言われる人たちがやっている議論は、結局戦後日本の対米従属、対米依存体制を正当化するためのもので、本当の国際政治学のパラダイムレベルの議論ではなかった。
・吉田茂とか佐藤栄作、中曽根とか、ああ言う人たちがやっていた対米従属政策を正当化するための議論を、東大の先生たちは供給しているだけで本当の国際政治学者でなかった。
・それが分かったので、僕は自分なりに国際政治学を勉強した。まず僕自身が、どのパラダイムを採用して国際政治の分析をするのか、つまり自分の視点をハッキリさせないと、キチンとした議論ができないと言うことを、ワシントンに来て初めて気がついた。
・そう言う点から見ると、残念ながら日本における外交政策、国防政策の議論は、どのパラダイムを使って議論しているのかを明確に意識しないまま、大変だ大変だと言っている。
・大変だから国防予算を二倍にしたら良いとか、高い武器を買わされても、もっとアメリカに協力しないとダメだとか言っている。
・日本の保守の原動力というのは、露骨にいうと、全てアメリカに捨てられたら大変だというもので、いつもおどおどビクビクしていて、アメリカにしがみついていく議論なのだ。だから大統領が変わるたび、今度の大統領は日本を守ってくれるのか、その次の大統領は守ってくれるだろうかという議論ばかりする。
やはり氏は、日本の悪口しか言わない人物に戻りました。喋っていることの中には、うなづきたくなる事実があるとしても、なぜそこまで悪様に言うのかと不快感が汗のように吹き出して来ます。
「貴方は、どこの国の保守なのですか。」
自分の国の保守を楽しそうに批判する氏は、「日本の保守」ではないようです。だから無意識のうちに、「日本の保守」はと切り捨てるのでしょう。この矛盾した人物が、どんな屁理屈で視聴者をたぶらかすのか、不愉快でも氏の雑談を静かに聞いてみなければなりません。
次回へ行く前に、今回は氏にたぶらかされた視聴者のコメントを3件紹介します。
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