おねっと日記

日々の出来事を感じたままにつづります

ラサの煙突

2010年10月03日 | 暮らし
宮古市にすくーっとそびえ立つ古いエントツ。
「あれがラサ工業の煙突だよ」と主人。
すでに昭和46年に閉鎖されているラサ工業のことは内陸育ちの私はあまり良く知りませんでした。



直径10メートルもあるラサ工業精錬所跡のの煙突。高さは160メートルもあるらしいです。
かつて重工業都市として反映した宮古市の面影が今もなお高くそびえておりました。
70年以上もの長い間、この煙突は何を思いこの街を見下ろしているのでしょう。
田老鉱山から運ばれる硫化鉱を載せた貨車が行き交い働く人々でにぎわう町並みが目を閉じると浮かんでくるようです。

「閉山」は町も人々の暮らしも変えてしまうものですね。
人であふれていた鉱山の付近は悲しいことにあっという間に「廃虚」という世界を作ります。
コンクリートの隙間から伸び放題の雑草、割れたガラスが散乱したままの建物。
そんな風景が今の社会からひっそりと取り残され、人々の記憶から次第に遠ざけられてしまいます。

40年前の高校時代の同級生に松尾鉱山の出身者がおります。
あるとき高校のバス遠足だったと思います。
八幡平へバスで向かうとき、その廃校をバスの窓から見ながら口元をきっと横に結んで
流れる涙を抑えきれなくなっていた友がおりました。
かつて通っていた母校の朽ち果てた姿。
どれだけやりきれなく切ない感情が渦巻いていたことでしょう。
私たちはそばで彼女にかける言葉を見つけることが出来ず共にじっと見つめるしかありませんでした。

鉱山の歴史の最後は人の心に大きな「悲しみ」というピリオドを打ちます。