田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

魔闘学園  麻屋与志夫

2008-10-02 09:38:35 | Weblog
すさまじい磁場嵐がおきた。
トルネイドに巻き上げられたようだ。

麻屋は岩盤ごと宙に吹上げられた。    

そこは鹿沼の街のなかだった。      

だが、どうみても古きよき時代の鹿沼だ。

これだ、これが三津夫たちがFデパートの屋上でみたという鹿沼のミニチャーだ。 
これも幻覚にちがいない。
「そうおもうか、なら下界をみるがいい」
麻屋の目の前にいた。
狐のままの姿がそこにはあった。
玉藻だ。
双眸が赤くひかっている。
妖狐の目をみたとたんに麻屋は洞窟の基盤ごと吹き上げられたのだ。

体が宙にうかんだ。
上空にうかんだ街のなかにいる。

地上では白い布におおわれた森で、鹿沼の若者たちの闘いはつづいている。
白い布で、いま昇りはじめた陽光はさえぎられていた。
白い布は、そのために張られていた。    

「まだわからないのか。あわれなものよ。これはおおきな呪いの藁人形なのだ。コノマチをくずせば本体であるいまの鹿沼にもなんらかの影響があらわれるのだよ。いや、わたしの針のひとつきで、その部分は消えてしまうのだ」

人間の脳にダミーの情報をながし、幻覚症状を起こさせる。
そうした妖術が玉藻には可能なのだ。

「どうしそれまでして、鹿沼を呪うのだ」

「この土地の人たちさえわたしの側についてくれさえしたら、わたしの九尾軍団はほろびなかった。野州のこの鹿沼は、わたしの最後のたのみだった。犬飼の民をわたしは敵にすることはないと信じていた。犬も狐もおなじ形態ではないか。それなのに、犬が狐を追うように仕込んだのは村人だ。すなおにしたがった犬は栄えている。ゆるせない。わたしは犬飼の地をふくむこの鹿沼の地を呪い滅ぼし、その輪をひろげこの日本を混沌の地にもどしてしまいたいの。そのために千年の時をへて蘇るのだ。じゃまはさせない」

「それこそ哀れなものだ。憎むことからはなにも生じない。憎しみの情を千年たっても忘れられないとしたら、あなたほどの術者が哀れなものだ」

「なんとでもいうがいい」

狐の黄金色にかがやく毛針がとんできた。
かわすことができない。
あたりいちめんが金色にけぶる。

無数の針が麻屋につきたった。
痛みではなかった。
麻酔をうたれたようだ。
感覚がにぶる。
薄れていく意識。

街が毛針の攻撃で崩壊する。
そのためにこそここにミニチャーをつくったのだ。
そのためにこそFデパートの屋上に中継箇所としておなじ、仮想空間の街をつくったのだ。

仮想の空間は毛針の攻撃を防御できない。
無力だ。

その仮想の街の崩壊が実体の街にどれほどの影響をあたえるというのか。
わたしはそれを確かめられない。
このまま……。



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