田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

高橋尚子現役引退会見  麻屋与志夫

2008-10-28 22:34:11 | Weblog
10月28日 火曜日

●Qちゃん長いことオツカレさま。そしてたくさんの感動ありがとう。

●GGを女子マラソンのファンにしたのはあなたのさわやかな走りでした。地球の引力を感じさせないような走り、素晴らしかったです。

●好きだから走った。中学の時から走るのが好きだった。だから、いままで走りつづけられた。

●これからは一人のジョガーとして走りつづけるかもしれない。という答弁もよかった。

●すべての話は原稿を見ずに展開された。

●ともかく、原稿を見ながらしか話せない、どこかの国の政治家に見習ってもらいたいものだ。

●胸の内を語る淡々とした語り口はまさにQちゃんの走りそのもの。さわやかなものでした。感動しました。

●さて、ひるがえってGGはじぶんのことをおもった。

●こちらは、この年で現役復帰願望をもちつづけている。統合性失調症ではないかと疑われるだろう。これからフルタイムの作家と成るなどということは、無謀も甚だしい。

●優勝するだけが美学ではない。Qちゃんはいいきった。

●作家になるだけが美学ではない。アマでも、いまはありがたいことにブログで読者を獲得することができる。拙い作品を読んでいただいて、いつも感謝している。

●されど小説は、プロになってはじめて小説家といわれる。

●好きだから書きつづけられた小説だ。これからもわたしの走りは延々と続くことだろう。



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吸血鬼の故郷   麻屋与志夫

2008-10-28 21:51:43 | Weblog
自由にメタモルフォゼできる。
進化した。
それでも残っている残虐行為。
だから、ヒトとしての心とあいいれないのか。
わたしは恐怖におののきながらも人狼の心情をおしはかっていた。

戦わなくてすむなら、戦わずにすませたい。
だが、人狼の殺戮行為は許されるものではなかった。

殺戮はとめなければ、猫から殺戮は人にまで及ぶ。
人狼集団は凶暴となり街をおそいだすだろう。 
獣たちの争う咆哮がいたるところでしていた。
「あなた死ぬわよ」
「美智子といっしょならこわくはない」
「パパがんばって」
「美智子、過去は忘れて生きないか。過去に殺されるぞ」
「わたしはそうしたいのだけど、DNAが許してくれないわ」
わたしはすべてをすてる覚悟をした。
「祥代といっしょに戦えるなんてしあわせすぎる」
「パパがんばって」

美智子とおなじようなことをいう。
顔立ちもわたしが妻としりあったころに似てきた。

「パパ! マツケンみたいだよ」
「ラストサムライの渡辺謙いってもらいたいな」

空には赤い満月がかかっている。

人狼が跳躍した。襲いかかってきた。

わたしは抜き打ちにしたから剣をすくいあげた。

剣がビュっと風を切った。

道場剣法の竹刀ではあじわえない風圧だ。

真剣をもつのははじめてだ。

ないだ剣のさきに人狼の尾があった。

ふさふさした毛が飛び散った。

人狼の敏捷に動きに剣がついていかない。
控えていた人狼がいっせいに吠えておそいかかってきた。
妻の長刀さばきは神技にたっしていた。
彼女と大学の古武道研究会で知りあったころを思い出していた。
祥代の技も美智子におとらずみごとなものだ。

いつになく、家族の絆を感じた。

妻や娘とともに戦うことが出来る。

「むかしを思い出すわ。あなた」
「ああ、おれだけ除け者にしないでくれ」
「そうよ。パパは石裂家の当主なの。剣の技を見せて‼」




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吸血鬼の故郷   麻屋与志夫

2008-10-28 14:43:38 | Weblog
「ついに人狼が覚醒したのよ。ママが心配していたのはこういうことだったのよ。ママはパパのために死ぬきよ。ママはパパをすてたわけではなかったの。あれはわたしの誤解だった。一族の掟を破ってでもパパを守るわ。本田のように猫の動向で人狼の覚醒を警戒する役目を継承する必要もなくなったしね」

長押にかけてあった長刀を手にした祥代と裏庭に走りでた。

そこで目にしたものは‼ 

ああ、地下墓地の壁でみた戦いの場さながらの光景だった。

わたしが駆け付けるまでの――間に、人狼が群れていた。

切り倒された人狼と、噛付かれ、鉤爪で引き裂かれたわが一族のおんなたちが苦悶している。
そこでは、怪異が現実の世界になだれこんでいた。
いままでわたしがいた世界とはちがっていた。
大地は負傷者の呻き声におおわれている。
肉を露出したものたちが地面でのたうっていた。
ここにかけつけるのにわずかな時間しか経過していないのに。
人狼に変身できるのは、あのジャンバー男だけではなかった。
彼らは森抜けて人狼となってから襲ってきたのだ。
「祥代にきいた。おれも共に戦う。ひとりで……死ぬなんてことは考えるな」
ふりかえった妻の目は赤くひかっていた。
「こんな姿みせたくなかったのよ。あなたにだけは見られたくなかった。わたしは長くこの世の浅ましい争いを見過ぎて、その恨みで……。怨念に凝り固まったこんな醜い顔を見せたくなかった」
「なにいちゃついている」
野卑なにたにた笑いをみせている。
わたしをおいかけてきた新聞配達の男に偽装していた人狼が目前にいた。
まだ人の偽装がわずかに残っている。
だが杖や歩行補助具のたすけをかりなければもう一歩も前進できない。

そのぎりぎりのところで、男は妻とわたしを睨みつけていた。
わたしは男を睨みかえしているうちに、なんともいえない原初的な恐怖がつのってきた。 
前肢を直接地面について狼の形態となって男は満月にむかって吠えた。
顔が全面に押し出されてきた。
鼻面がボルゾイ犬のように長くふくれあがり、口からは凶暴な牙がはみだしていた。
グランヴィルの蛙ならぬ、狼への退化の階梯をこんどこそ目のあたりにした。
わたしは戦慄していた。
震えはとまらない。
「なぜ、どうしてまた血をながさなければならないの」
「それはおまえたち九尾族とておなじこと。積年の恨みはきえるものではない」

人狼の口がことばをしゃべっている。
人狼はごもごもとした口調で応えた。

あの歯牙で猫をおいしそうにたべた。
猫の肉を噛み砕いた。クシャクシャたべた。
そのかぎりない凶悪な食欲にくらべて、いま人狼からながれ出てくるのは悲哀の波動だった。
人狼として嗜虐へと逆行していく過程で、ヒトとしての悲しみの感情がまだのこっているというのか。




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