田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

都市伝説/鹿沼   麻屋与志夫

2008-10-25 23:18:21 | Weblog
10月25日 土曜日
●すこしでも故郷鹿沼の知名度をアップさせたい。そんな気もちから、いつも小説には現実にこの鹿沼にある土地や、建物、商店名などをそのまま使っています。やはり不味いでしょうかね。

●昔のように編集者がついていない。孤立無援。文学を語る友と会えるのは年に数回。禁止用語などを不用意に使っていたらなにとぞお許しのほど。

●忘れられた作家は寂しいものです。それも、雑誌デビューをはたして、作品を発表していただけのわたしにとっては……。

●でもこうしてPCがあるのでたすかります。うれしいです。拙い作品ではありますが読者がいます。読んでいただけることの快感。ほんとうにうれしいです。

●こんなことは一昔前では、想像もつきませんでした。

●ペン書きの原稿用紙に書いた小説。どこに応募しても何の反応もありません。悲しいものでした。

●文明の利器!! を使えるありがたさをしみじみ感じています。

●今日の舞台、鹿沼の入口がわからない、といって祥代が騒いでいるあのありにはどうも鹿沼のミステリースポットがうまれつつあるようです。インターからおりたあたりです。

●これも不謹慎と叱られるかもしれませんが、あそこは水没事故のあったところです。

●鹿沼の都市伝説がささやかれている場所です。でも、この小説はすでに4年ほど前に書きあげて異形コレクションに投稿したものです。大幅に改定加筆はしてありますが。

●ひきつづき、吸血鬼の故郷をお楽しみください。

●「魔法のiらんど」に、携帯小説、これまた吸血鬼の出没する「coelacanth三億八千万年の孤独」を発表しています。麻屋のブログ「病床日記(いつか青空)」も載せています。よろしくご併読のほどおねがいします。


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吸血鬼の故郷   麻屋与志夫

2008-10-25 22:30:04 | Weblog
わたしは木陰から身をひいた。
音をたてないように退いた。

火を背後からうけて立ち上がった男のシルエット。
それはもはやヒトではなかった。

口がずずっとせりだして狼のアギトをしていた。

わたしが人であると視認していたものは、異形のものだった。
なんの変哲もない日常の中に異形のものが潜んでいた。
量子レベルの変容をみせる怪物にとりかこまれて平気で生きてきたのだ。
血に飢えたもの、人狼にとりかこまれて、それに気づかなかったのだ。
なにも見えていなかった。
だから、のんびりと生きてこられたのだ。

だが、いま血に飢えた狼におそわれている。  

狼男に追われている。

追いかけてきているのは人狼だ。

ここは地名が犬飼地区。
わたしは、いやしくも民俗学を学んだ者ものだ。
このあたりの伝説には通暁している。

むかし、玉藻の前を関東平野の北端まで追い詰めた、犬飼一族の住んでいた地域がここだ。

だが、犬を飼っていたのではない。

住民が人狼だったのだ。

わたしは、車に逃げ込んだ。

スキット音をたてて車をバックさせた。

恐怖とともに振り返った門柱には『北犬飼公民館』と墨痕鮮やかに書かれていた。

おぞましい影はすごい速さで追いかけてくる。

二足歩行をやめた。人狼となって追いかけてくる。


どこまでも追跡してくる。
わたしもさらに加速した。 
路肩を車でこすった。
火花が散った。

狼が追いついてきた。

歯を剥いて唸る。

車に激突する。

わたしは必死でハンドルをにぎり、アクセルを踏み込んだ。                    



わが家の門がすぐそこだ。

「はやく門をあけてくれ」



注。これはファンタジー小説です。現実の地名を使っていますが、現実とはいっさ
い関係ありません。




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吸血鬼の故郷   麻屋与志夫

2008-10-25 17:17:16 | Weblog
「どしうしたらいいの」

祥代がじれている。
道路はたしかにある。
満月がひえきった舗道を照らしている。
だが、その先、街から東北縦貫道路へでるインターへの道が濃い霧の中に消えている。
霧は一面にただよっているといったわけではない。
わたしの車のまわりにまつわりついている。
わたしの走行を妨害しているのだ。

夜明けを待つほかないだろう。

このあたりから、鹿沼インターにはいる道があるはずなのだ。

祥代がすぐそこまできている。

でもこの霧の中を進むのは危険だ。
わたしは車を止めた。

ヘッドライトの光軸のさきにブロックで構築された門があった。
ジャンバーの男がバイクで乗り入れていく。
すこし背をかがめた姿がさきほどの男に似ている。
だが、新聞社のロゴのはいったジャンバーはきていない。
皮製品だ。それががっしりとした体にぴったりと張り付いている。
わたしには気づいていない。
それでもわたしは路肩に止めた車のなかで姿勢をひくくした。

猫がよろこんでからだをすりよせてきた。
わたしは車から下りて男の消えた門を目指した。

霧がまた流れてきた。

寒い。

だがわたしを小刻みにふるわせているのは寒さだけではなかった。
門をくぐると霧はさらに濃密になった。
バイクが止めてあった。
ハンドルについている荷物入れのバスケットの中は空だった。
新聞入れのズックの袋があったはずだ。

裏庭の方で人声がする。  
あかあかと火がもえていた。
火勢が強いので、その辺りだけ霧がはれていた。
男たちがそろっていた。
車座になって酒盛りをしていた。
「レアもいいが、バーベキュもいいな」 
「あまり焼き過ぎるなよ」 
鉄串に突き刺されてやかれているのは、あの気高いホワイトペルシャ猫だ。
仲間に疎んじられていた長毛種の猫だった。
毛がじりじり音を立てて縮み、燃え上がり……。
それからさきは見ていられなかった。
わたしは恐怖で動けなかった。
シャム猫が嬰児にみえた。
嬰児が焼かれている。
袋から猫であったものをさらにひきだそうとして、男は鼻をうごめかせた。

「人だ。人の臭いがする」



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吸血鬼の故郷

2008-10-25 07:10:59 | Weblog
店の裏側、外の闇とちがい店内は明るかった。
冷気はここまではとどいていない。
むしろ暖房が効き過ぎて暑い。
店の内部は閉店間際の11時近いというのに混雑していた。
売れ残った50%引きの魚介類をあわただしく買った。

店のなかを正面へむかって抜けた。
表側の駐輪場に自転車は一台もなかった。

魚の臭いがしても猫は出てこない。
みんな殺されてしまったのか。
不安になった。
と……ごろごろ喉をならす音がした。
植え込みから一匹出てきた。
孕み猫だった。
お腹をコンクリートにこすりつけるほどたれさがっていた。
そのために、男を攻める群れには参加しなかったのだ。
それで命拾いをしたのだろう。
わたしは臨月まぢかの猫を抱えあげた。
いまにもアイツが裏側の駐車場から、この表の街灯のこうこうと輝く広がりのなかにかけこんでくるかもしれない。         
猫は重かった。
だきかかえられてお腹がくるしいはずだ。
いやがらなかった。
車の後部座席にのせた。
本田の部屋からつれてきた黒猫がよってきて孕み猫と鼻面をあわせて挨拶をしている。 
駐車場にはまだかなりの車が止めてあった。
あの暗闇でおきていたことがウソみたいな明るさだった。
手をひかなければならないような子供づれの家族さえいた。
車をスタートさせるとすぐに二匹の猫がわたしのそばによってきた。
安心したのか、ハッポウスチロールの皿から刺身をたべだした。
雌猫のほうが飢えていた。
おなかの子猫のぶんも栄養をつけているような食べっぷりだった。

「おとうさん、みつからないのよ。街の入り口がわからない」

「いまそっちへむかっている。このまま祥代と合流して東京へもどろう」 
ところがこんどはわたしが街から出られない。
街からインターへ出る道がわからないのだ。
なるほどカーナビにも映らない。

街が地図から消えてしまった。



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