田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼の故郷

2008-10-29 09:48:13 | Weblog
わたしは、なぜか父母の埋葬の地下墓地から救い出されたときのことを思い浮かべていた。                 
わたしは、台座の上で座禅を組んで瞑想にふけっていた。
親族のものたちは、わたしが悠然と座っているとみて感銘を受けた。
あれで一族の当主として一応は認められた。
じっさいは、腰を抜かして、立ち上がることができないでいたのだ。

いまも、剣をもったわたしに好奇と期待のまなざしが向けられている。

一族のものの赤い瞳と人狼の白い牙。

ギャッと悲鳴が上がった。                  
一族の女が人狼に腹部の肉をもっていかれた。   
人狼の爪で引き裂かれた。
鉤爪に付いた肉を貪り食っている。 
一族の赤い瞳にあとおしされて、白い牙をひらめかせる人狼にこちらから切り付けた。

人狼は体をふせることでわたしの剣をさけた。
立体的な敵と戦う剣技は平面の敵にたいする攻撃には弱い。
なす術がない。
人狼は後退はできない。
前にすすむか、からだをふせてよこに跳び退いて剣をさけるしか逃げる方法はない。  
ばんと人狼は跳ねた。
しめた。
わたしは人狼の落下地点に、剣を虚空にむかって突き立てた。
そこへ、人狼の腹部が落ちてきた。
剣の先は人狼に背中からつきでていた。
そのときおぞましい感情が剣からわたしに伝わってきた。
害意でも、凶念でもないなにか。           
悲しみに似た感情。  
じぶんたち人狼が背負った業からときはなされるといった安らぎ。
いままで人狼にいだいてきたイメージからはほど遠いものだった。

「明日の夜からはもっと大量の人狼がおそってくるわよ。備えを再点検して」

妻が門倉に命令している。  

そんな夜がこないことをわたしはせつに願った。

わたしは活劇のヒローにはほど遠い存在なのだ。



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