田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

生き血を吸うなんて!!/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-05 06:24:04 | Weblog
8

美香は怖気づいた。
エイドリアンは「ピットイン」からでてきた。
骨董通りの「ブルーノート」をでてきたときと等質の怒り。

「ちくしょう、バカにされた。アイツラ吸い殺してやる」

とつぶやいている。
今度の場合ちがうのは、女性を強引に同伴させていることだ。
エイドリアンは出演交渉にいってマネジャーにことわられていたのだ。
そのことに気づいて美香は怖気づいたわけではない。
エイドリアンの怒りが激しかったからでもない。
美香は気づいたのだ。
エイドリアンとの距離が縮まらないのは。
アイツが吸血鬼バリアをはっているからだ。

だから。
近寄れない。
アイツの腕の中の女性は――。
クシャ。
ゲンナリ。
グッタリ。
わたしに気づいているわけではなさそうだ。
吸血しているときには、いちばん無防備になる。
だからバリアのなかでする。
速く助けなければ。
アッ。
止めた。わたしもタクシーでおいかける。

「わかいのに、探偵さんですか」

運転手は前をいくエイドリアンの車をおいかけながら訊く。

「マカレナイデネ」
「同じ会社のくるまですから。なにかあれば、連絡つきますから」
「ラッキー」

運転手はもういちど、美香を眩しそうなめで見つめた。
顔より若いのかもしれない。

「オネガイネ」
「まかせてください」

エイドリアンが着いたのは。
池袋の雑司ヶ谷霊園ちかくの廃屋。

霊園での戦いには美香は参加していなかった。
なにもしらない。
聴かされてもいなかった。

薄闇の中。
女性を抱えたエイドリアンの黒い影が荒れ果てた庭をよこぎる。
はやく、本格的に吸血したくてVは興奮している。
玄関の扉。
内側から開かれる。
見おぼえのある赤い毛のVの仲間。
エイドリアンが首を横に振っている。
出演交渉がうまくいかなかったことを告げている。

「今夜はのもうぜ」

仲間が女の顔を見て。
血のしたたる襟元を見て。
血の匂いを嗅いで。
興奮している。

速くたすけなければ。
わたしひとりでは、ヤバイ。
Vバスターズを呼ぼう。
携帯をとりだした。
開く。
闇の中でポット灯りがついたみたい。
メールの着信だ。

「Vバスター。到着までに0ふん。後ろにいるから」

エエエッ。

でも、隠形している。

摩利支天の隠形印を結んでいる。
さすがにテレパス。
美香にはかすかに気配だけはかんじられる。

だれがいるの。

麻衣でーす。

昨夜から……。ここ、張っていたの。

時ならぬ。
メールのやりとり。
勇気づけられた。
美香はしらなかった。
昨夜から空き家や家主の所在不明の家に張り込んでいた。
クノイチ48のメンバー麻衣のグループが。
この家にねらいをつけて。
張り込みをつづけていたのだ。

いくわよ。
アタック。

携帯を閉じた。
美香は浮船を左手に右手が指剣。
ひさしぶりに八双の構え。
それほどの相手だ。
正々堂々と。
正面玄関から討ち入り。
そして。
見たのは――
血の海。



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