田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

オネエ。いまこそホースの放射よ!!/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-23 08:49:07 | Weblog
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報道陣が狂乱する群衆にカメラの砲列を向けている。
シャッターが切られている。
ピカピカ光っている。
暗黒の歌声ははまだつづいている。
どこから流れてくるのかわからない。

「あんたら、どいて。プレスのひと。あぶないわよ」

ふたりの声はとどかない。
脚立にのったカメラマンの下のケースが怪しい。
音はあそこからしている。

「香世どうしょう」
「警察には携帯いれた。
でも爆発物処理班が来るの待ってられないよ。
いますぐにも爆発するかも!!」
「香世――」
「オネエ。
ホースだ。
能力使おう!!」
「わたしまだ指剣を使うのさえ、やっとなのよ」
「ダイジョウブ。わたしもやる。
オネエ。ひとのために、ひとを助けるためなのよ。
命がけでやれば」
「ホースの発動あり!!」

ケースが右端のカメラマンの足もとからさらに右に動いていく。
でもユックリトダ。
いまにも爆発するのではないかと不安だ。
恐怖だ。
美香の力の方が弱い。
思念が途切れがちだ。
美香はあらためて両腕を交差させた。
こぶしを握った。
気を腕先にためた。
掌を開き一気にケースにむけた。
ズズっとカメラマンから遠のく。
カメラマンがそれに気づいた。

「爆弾よ!!」

カメラマンはとっさにシャッターをきっている。

「そんな場合でナイシ」

美香がカメラマンにホースをむけた。
カメラマンは左側の仲間に激突した。
それでもケースからは離れた。
彼が仲間になにか叫んでいる。
一斉に、ケースから距離を置くために彼らは走りだす。
このとき、爆発が起きた。
轟音。
光。
なぎたおされるひとびと。
脚立が中空にまいあがった。
爆発の瞬間にケースが横に吹っ飛ぶのが見えた。

「よかった。間にあった」

男がいた。
香世の脇に男がいた。
百子の父のひきいる異能部隊の制服だ。

「あなたもホースがつかえるのね」
「美香&香世さんのようにはいきませんが」
「よかったわ」

百子が駈けつけてきた。

「間にあったのね。鳥打さん」

鳥打が彼女たちに敬礼した。
騒然とした群衆の中に戻っていく。

陰気なエイドリアンの歌声は――。
まだひびいている。


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