田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

接着できるかしら/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-26 18:32:51 | Weblog
23

ふいに、部屋に闇が充ちた。

「アンデイ。マスターよ。VMよ」

闇の中だ。
シャリーのささやきに応えた。
美香と香世は背中合わせにかまえた。
魚の腐ったような臭いがする。
肌にへばりついてくるような腐臭だ。
臭い。
ねばつく手で。
体をなで回されるようだ。
肌が恐怖でふるえている。

「近寄ってくるシ。オネエ。見える」
「見えるシ。シンパイしないで」

トオァ。タタタ。
美香の裂帛の気合が部屋にひびいた。
指剣が青白く炎をあげた。
光っている。
その光の先。
その炎に照らし出された。
黒いマントの影。
何時にもまして陰惨な存在。
エイドリアンだ。

「アンデイ。いまさら日本まできて戦ってどうなる」
「アメリカの夜の世界の支配に失敗したから、
こんどは極東の日本を選ぶ。
日本を制覇するなんてワンパタンだな。エイドリアン」
「なんとでもほざけ」

アンデイは日本の大学に留学するためにきたのではなかった。
だから東都大学に籍がなかったのだ。
わたしに心配かけたくなかったのだ。
よかった。
でも、打ち明けてくれないなんて水臭い。
いくらでも、協力できたのに。
でも……これからはいつも……アンデイと共闘できる。
美香の指剣が。
マスターのコートからアンダーウエアまで。
切り裂いた。

薄ぼんやりとした明かりの中だ。
ほとんど美香の指剣がはなつ光だけだ。

それでも見えた。

こんなことがあっていいのか。
VMの肌は、重なり合う鱗におおわれている。
わざとらしく、まだ腕にのこっているコートの袖をひろげる。
巨大なコウモリに見える。

歌劇のように大袈裟なしぐさだ。
過激すぎる。

「エイドリアンは劇場型のvampireなのだよ」

いえてる。と美香はおもった。
そうなんだ。と香世はおもった。

「だから、ヤルことがハデなんだ」

ふたりが同じ言葉を声に出す。

「なにいってるんだ」

エイドリアンがききかえす。
しめた。
あいつには、わたしたちの思念は伝わらない。
読まれない。

「わたしうしろにまわるね」

香世が美香のあたまに話す。
マスターの鉤爪がアンデイにのびる。
アンデイ横に跳んでかわす。
そのとき、香世がVMの背後から気をたたきっけた。
よろけるVMの肩口に美香が指剣で斬りつけた。

憤怒の声。
怒声。
絶叫。
エイドリアンのあげた悲鳴に反応して明かりがついた。
まばゆすぎる明かりに眼がくらんだ。
エイドリアンの腕にさらに浮船で斬った。
輪切りのようにエイドリアンの肉がとんだ。

これでも接着できるかしら?



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水温む。鴨。クリロー/麻屋与志夫

2011-02-26 10:11:50 | Weblog
2月26日 土曜日

●きのうは、春一番が吹いた。
春風に誘われてカミサンといつもの河川敷に散策にでた。
浚渫工事も上流のほうでは済んでいた。
川幅が広くなったので、ながれが緩やかになった。
「川の水が上流にながれているように見える」
たしかに小波が上へ上へと逆巻いている。
どうもうまく表現できない。
上流にむかって小波が波紋を広げている。
……平凡な風景でも描写できないことがある。
情けない。

     

     

●静かな流れに鴨がおよいでいた。
数日前には見当たらなかったのに。
6羽ほど川面に浮かび向かう岸に沿って動いてく。
およいでいるのだろうが――。
流れに逆らうでも、身をまかせるでもなく――。
かすかに動いているのがわかるような風情だ。
水温む鴨の泳ぎもゆるゆると。
こりやだめだな。
俳句にもならない。

●「土手がけずられたので、鴨が遠くなったわ。近寄れない」
カミサンが愚痴っている。
でも少女のように澄んだ声なので愚痴にはきこえない。
いや、愚痴っているわけではないのだろう。
ビンボーしている。
一眼レフを買ってあげられないので、そう思ってしまうのだ。
わたしには僻み根性がある。
カミサンになんにもしてあげられない。
もうしわけない。

●今年もあまり塾生は増えていない。
一眼レフはまたまた来年に持ち越しだろう。

●府中橋の上から鹿沼市の市章が見えた。
このロゴは五芒星のようだ。
わたしはこれを、この風景を小説の中でいかそうとおもっていた。

     

●家に戻る。
濡れ縁でクリスマスローズが咲いている。
「おれのブログにもシヤシンたのむ」
デジカメをかまえているカミサンにおそるおそる頼んだ。
もちろん、イイ返事がもどってきた。
わたしはカミサンの手に一眼レフがあることを想像していた。
そんな日が来るといいな。

     

     

     

     

●男体山はまだ雪がのこっていた。




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