田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

写真くらいは自分で撮ったら/麻屋与志夫

2011-02-20 07:10:57 | Weblog
2月20日 日曜日

●大谷石の塀の窪み小さな芽がでていた。
なんの芽かはわからない。
緑の一センチほどの芽生えだ。
うれしくなってカミサンに「これとってよ」といつものように頼んだ。

     

     

●「じぶんで撮ってみたら。たのしいわよ」

●このところ、とみに、なにをするのも億劫になっている。
これを老いとしてとらえるか。
モノグサと、とらえるかはひとそれぞれであろう。
カミサンはモノグサとしてとらえてくれている。
GGになったからといわれるよりもありがたい。

●むかし子どもの頃。
「モノグサイのはクソッ臭い(下品な表現でごめんなさい)のより悪い」
とよくおやじに罵倒された。
朝から晩まで本を読んでいる。
家業の手伝いはなにもしない。
商家としてはとんでもないバカ息子だ。
文学の勉強に明け暮れたため。
犠牲にして来たものの大きさを。
多さを。
つくづく痛恨の思いで懐古することがある。

●じぶんだけならいい。
カミサンにも、子どもたちにも満足のいく生活はさせていない。

●石の窪みから自然と芽吹き成長していこうという草を見た。
塀の上に溜まっていた枯れ落ち葉もきれいにカミサンが取り除いた。
ツルバラの誘引で、パチパチと木ばさみを使っている。
その音がここちよい。
大バサミで頭上の藤のつるをきっている。
しまいには椿の大枝まで伐採する。
小柄なからだのどこに。
あのエネルギーが秘められているのかとおどろくばかりだ。

●家には、男がいないから。とよくいわれるが、むべなるかな。

●シヤシンくらい、じぶんでとりたいものだ。

     クリスマスローズ バイカラー

     

     



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ススキの穂が恨みのほむらに見えた/麻屋与志夫

2011-02-19 12:45:55 | Weblog
2月19日 土曜日

●昨日は、午後買い物を兼ねて散歩に出た。
風はつめたかった。
ホームセンターの『カンセキ』。
いつものようにカミサンがクリスマスローズを観た。
値段が高すぎた。
わたしに遠慮し、買わなかった。
人気のあるものは、だれもが欲しがる。
それで高い。
クリロはこのところ人気が上昇。
supply and demandに乱れがあるのだろう。

●新鹿沼橋のたもとから河川敷におりる。
川風がふいている。
マスクする。
枯れススキの群落にわたしの影が映っていた。
いつのまにか西日になっていたのだ。
「とってよ」とカミサンに頼む。

     

●川は浚渫作業がおこなわれている。
ついでに川岸にたまっていた土砂もけずりとられた。
ススキが生い茂る自然が失われる。
ささやかなデルタ地帯の草木の生い茂る風情も消えてしまった。

●枯れ草色のススキが、そのことを憤慨して激しく風にさからっているようだった。
ゆらぎ、乾いた音をたてる穂が恨みの炎(ほむら)にみえてきた。
川幅が広くなったので水はゆったりと流れていた。

●いつもは見かけられる白鷺も鴨も作業にともなう騒音をおそれてどこかに避難しているのだろう。
姿はなかった。
いつものホームレスが川へ下る石の段を掃除していた。
「なにしてるのかな」
「体が鈍るから働いているのよ」
独りだけの奉仕活動というところなのだろうか。
わからない。
知り合いの人だけに声をかけるのもはばかられた。
なんじの性の拙さを嘆け。芭蕉のそんなことばがあったのをおもいだした。

●VIVAではクリムの小さい苗、380円を一鉢かった。
大粒の赤土の袋をリックにつめた。
ずっしりと重かった。
いつまでリックで買い物を運べるだろうなどと心細いことを考えた。

●茜色の空の下をカミサンと家路についた。

●10900歩、ほどの散歩だった。



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恵みの雨/麻屋与志夫

2011-02-18 06:29:24 | Weblog
2月18日 金曜日

プログです。

●夜来の雨がまだ降り続いている。
少し雨音がはげしくなった。
雨が庭の地面をうつやさしい音をきくのはひさしぶりだ。
凍てつき白くほこりっぽかった大地。
永久凍土のようだと寒さを呪っていた。
喉が敏感なのでこの乾燥期は毎年のことだが苦手だ。
のどがいがらっぽい。
たえず咳をする。
嗽をしても、龍角散をのんでもだめ。

●ところがガムをかんだところ。
唾液が豊富にでた。
喉のいらいらから解放された。
なんのことはない。
年なので唾液の分泌が不足していたのだ。
この歳になって子どものようにガムをかむ習慣がついた。トホホホホ。

●雨音はさらにつよくなってきた。
ふと呼吸してみる。
なにか空気がオイシイ。
しっとりとしている。
もちろん、喉にすごくやさしい。

●この雨は、春を呼ぶ雨なのだ。

●受験生は試験の真っただ中。
在校生は期末テスト。
わたしのような零細塾の教師は入塾生の増加をただ祈るのみ。

●この時間には、朝型の子はもう目覚めて勉強しているだろう。

●わたしは新しく書く小説のことをかんがえている。

●想像力が涸渇するのではないか。
そんな不安をかかえている。
毎晩、若い塾生と共有する時間が潤いをあたえてくれる。
若い人には、若さのすばらしさがわかっていない。
無駄なことをして失敗している彼らがうらやましい。
いくらでもやり直せる。
いくらでも浪費する時間がある。
それが若さなのだ。

●つくづく塾で教鞭をとっていてよかったとおもう。
年寄の経験がものをいう。
若いときには、見えなかったものが見えてくる。
でもその発見をズバリ言ってしまって失敗することもある。
人間という器は、感情に支配されている。
あまり刺激的なことを指摘するといやがられる。
むずかしいものだ。

●外があかるくなったら、黒くなった庭の地面を見に外に出よう。

●ひさしぶりの雨でこころも和んできた。
恵みの雨というべきか。慈雨だ。



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美香爆泣き/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-17 09:56:38 | Weblog
18

「あれって――口パクだよ。オネエ」
 
 うしろからついてくる香世が叫びかけてくる。
 美香は香世の手を引いて人垣を押し分ける。
 そうだ。
 やはり、口パクなのだ。
 アンデイはあんな暗い声ではない。
 それより腕だ。
 わたしの推理がただしければ。
 あれは爆薬のしこまれているブレスレットだ。
 どこかでみた。
 そうだ。『トランスポ―タ―』だ。
 数日前に、テレビでみたばかりだ。
 フランクが特殊な液体爆弾入りのブレスレットを装着されてた。
 まちがいない。
 あんなものが現実に――ソレツテアリ?

「アリィー。まちがいないよ。オネエ」

 香世が美香の思念をよんだ。思念でふたりは会話している。

「わかる。香世。あの中継車にエイドリアンが潜んでいる」
「わたしが、舞台の周りにバリヤはる。…………」

 皆まできかず、美香は舞台に跳んだ。
 アンデイの目が見開かれた。
 美香は指剣にすべてを託した。
 指剣の青い炎がでなければ。
 ふたりとも死ぬ。
 すくなくともわたしは助からない。
 アンデイはなんとか助かるだろう。
 WVといっても、吸血鬼にはちがいない。
 再生能力はそなわっているだろう。
 でた。炎がでた。
 燃えている。
 いくわよ。
 アンデイ。
 美香はマイクを握ったアンデイの手くびに斬りつけた。
 アンデイの手くびが宙にとんだ。
 ブレスレットを瞬時に外した。
 中継車に向かって投げた。
 車のフロントにブレスレットがヒットした。
 爆発音。
 車も、
 舞台も、
 群衆もふっとんだ。

「おどろいたぁ。ほんとに爆薬がしこまれていたのね」

 香世が美香を抱き起した。

 アンデイが腕に手くびを接着している。

 ウソみたいにぴったりもとどおりにくっ付いた。

 美香はアンデイに抱きついていた。

「アンデイ。アンデイ」



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わたしのアンデイがチョウヤバイよ/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-16 11:18:20 | Weblog
17

「あっ!! エイドリアンだ」
 香世が絶叫した。

 照明をあびて舞台中央に立ったその姿は。
 黒いコート。
 裏側は真紅、まるで遮光幕。
 シルクハット。吸血鬼のカリカチュアみたいだ。
 ウオ―というような大歓声。
 大音量でひびきわたったエレキギター。
 そしてドラムス。
 ぴたりと演奏がとまり。
 エイドリアンが歌いだした。
 英語の歌詞がわからない。
 でも――暗黒の世界に惹きこまれるような陰気な声だ。
 それでいて、聴かずにはいられない魅惑の声。

「なんて歌っているの? オネエ」
 美香はジャズピアニストの叔母、柳生倫子に英語の歌を教わっていた。
 留学するときのことをかんがえて。
 英会話教室には小学生のときからかよっている。

「暗い…暗い、闇の底でおれはきみをだきしめている。腕の中にきみをだきしめて、腕がしびれる……」
 歌詞を訳しながら……美香は腕、腕とエイドリアンのマイクを持つ……。
 腕……を凝視する。
 なにか金属の分厚いブレスレットをしている。
 ちがう。
 あれはエイドリアンではない。
 あれはわたしのアンデイだ。
 ひきつったような声が、声のない声が。
 歌声とはべつの声が。
 頭にじかにひびいてきた。
 マイクを持った腕を高く掲げている。
 ブレスレットが光っている。
 夕暮れの太陽の光をあびて輝いている。
 頭にひびく声がはっきりとしてきた。

「美香……来ているんだろう。美香。ぼくの腕を斬りおとせ。腕をきってくれ……」

 アンデイだ。
 やはりアンデイだ。
 ぶじだった。
 元気だった。
 でも頭におくりこまれてくる思念。
 わからない。

「どうして、腕を斬るの」

 こちらの思念はアンデイにはとどかない。
 アンデイの思念がみだれる。
 腕を……腕を……。
 アンデイはコートの裾をひるがえし高らかに歌っている。
 群衆の中で悲鳴がおきた。
 絶叫がおきた。
 ひとが刺された。
 ひとがナイフで刺された。
 ひとが襟首を噛まれた。
 ひとが鉤爪で刺された。
 
 百子はこれを予知していた。
 百子はこの惨事を。

「おさきにいくよ」

 美香と翔子にあいさつして。
 百子は人ゴミのなかにとびこんでいった。
 吸血鬼と対決するために。
 Vバスターズのメンバーに指令をだしている。
 残された美香は。
 舞台上のアンデイにむかって行く。
 そしてふいに彼のことばを理解した。
 たいへんだ。
 アンデイの命が。
 危うい。
 


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だれが歌うの?/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-15 05:51:43 | Weblog
16

「三日ほどまえにもね、ネット掲示板で新宿駅前での『通り魔予告』があって中学三年生の男子が逮捕されたの」

 美香は病室。
 アンデイのことばかりかんがえていた。
 世間のことに、興味を失っていた。
 他のひとたちの運命とか。
 外でなにが起きているということに。
 無関心でいた。
 恥ずかしい。

「香世は……」
「兆子と2人で、こっちにむかっている」
「それで……」
「なにも、わかってはいないの。
路上ライブがあるって書き込みを玲加がたまたまみつけたの。
それだけのことなの。でもすごくニオウ」
「いやな予感が、してきたシ」

 翔子と純がいた。二人揃っている。
 gaze enviously at them 
 受験勉強中の美香としては英語の熟語をおもいうかべる。
 いいな。ふたりおそろいで。
 Vバスターズ『クノイチ48』のメンバーが。
 めだたないように新宿西口広場の群衆のなかにちらばっている。
 こんなとき、女の子はまわりの群衆にとけこんでしまう。
 カモフラージの必要はない。

「美香コレ着て」
 美香はジーンズにジャンバーすがただった。
 百子がさしだしたのはarmorだった。
 タートルのセェタのしたに装着した。
 襟首の防護も確かだ。

「コレって……?」
「そう。Vがカランデルとおもうの」

 だれが出演するのか。
 どこのバンドか。
 いろいろな憶測がみだれとんでいる。
 群衆はふくらむいっぽうだ。
 パソコンや携帯。情報は加速度的にふくらむ。

「美香、もう……イイの?」
翔子が声をかけてきた。
「大ジョウブ。もうなんともない」
 群衆のざわめきがボワーンとひびいてくる。
「父たちは」
 翔子と百子がどうじにおなじことをいった。
「きてるのかしら」
 とつづけて人だかりを眺めている。
 そのなかから、香世と兆子があらわれた。
 香世は美香をみて悲しそうに首をよこにふる。
「なによこのひとたち」
 兆子が百子をみる。
 百子から応えはもどってこない。
 はじめはイタズラみたいな書き込みだったにちがいない。
 新宿で無届の路上ライブ。
 そんなところからはじまったのだろう。
 仮想空間で噂は噂を呼び。
 集まったひとが、ひとを集め。
 またたくまに、大群衆となっていた。
 バーチャルの世界が瞬時にリアルな反響をみせる。
 こうなったら、とめどもない。
 とまらない。 

「あつ。あれ。みて」
 香世が叫んだ。
 群衆の中で金属製の脚立がならべられだ。
 その上に合板がならべられた。
 瞬く間に、即席の舞台ができた。
 そのステージ忽然と現われたのは――。

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新宿無届路上ライブ/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-14 07:15:21 | Weblog
15

「それって、オネエ。ガチヤバ」

困ったときは、Vバスターズだ。
こんどは、百子に連絡した。
「チョウヤバイよ。なにかあったのね。香世ちゃんには、兆子を付けるね」

外出は許されていない。
つらい。
わたしがアンデイを探しまわらなければならないのに。
兆子や香世がわたしのためにアンデイを探してるのに。
わたしは何もできないでいる。
病室にいる。
指剣をかまえた。
やはりだめ。
チョロっとしか青い炎は現われない。
必死で念をこめてみる。
ダメだ。
わたしは恋をしたから能力が消えていくのか。
アンデイのことばかり想っているから能力を喪失するのか。
あの指剣をかまえる輝き。正義のためにたたかっているのだという充足感。
すべてを失ってしまうのか。

「オネエ。たいへんだよ。東都大学の比較文学コースにアンデイという留学生はいないよ」

現住所どころか。
大学でもアンデイの所在は不明だ。
どうなっているのだろう。
美香は困惑した。
美香は不安になった。
アンデイはわたしにウソをついていたのだろうか。
わたしはアンデイにダマサレテいたのだろうか。
そんなことはない。
なにか、あったのだ。
携帯さえつながれば。
アンデイのこえがききたい。
アンデイに会いたい。

信じる。
わたしはアンデイをどんなことがあっても信じる。
信じる。

それにしても……アンデイ。
イマどこ?
どこにいるの?
連絡できないの?

携帯が鳴った。
あわててでた。
百子からだった。
携帯は使えないことになっている。
小声ではなす。

「美香。戦える。新宿が大変なことになりそうなの」
「いく。すぐいく」

わたしのいまの状況をよくしっている。
百子だ。
その彼女からの召集コールだ。

病院前からタクシーにのる。

「新宿で路上ライブがあるの。無届らしいの。インターネット掲示板にそこでの――JR新宿駅前での無差別殺人予告が書き込まれていたの。おおさわぎよ」



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雪の朝、詩集と小説を読んだこと/麻屋与志夫

2011-02-13 04:53:49 | Weblog
2月13日 日曜日

プログです。

●昨日は、断続的に雪が降った。
雪の合間に、カミサンと街に出た。
すっかりトレードマークみたいになっている。
おおきなリックを背負い、ハンチング姿だ。

●ホームセンターカンセキ。
カミサンはすきなクリスマスローズを眺めていた。
ダブルの花をつけるものは高過ぎたらしい。パス。

●黒川の河川敷に下りた。
ヨークベニマルまで歩く。
府中橋の橋柱に駈けあがるエクササイズをしている若者がいた。
二人で声をかけあっていた。
あり余るほど時間のあるヤングがうらやましい。

●しばらぶりで、すき焼きでイッパイやりたくなった。
すこしぜいたくだが日光牛を買った。
ところが、ラッキーなことに四割引き。

●熱燗で一合。
お酒を飲むのはひさしぶりだ。
とはいっても、四日ぶりかな。
ゆっくりと時間をかけて飲めばいいのだろうが。
それができない。
いつも小説を書くのに追われている。
いつもせかせかしている。
つくづくビンボー性だなと思う。
わたしの場合は『症』かもしれない。
ここまできたらもうビョウキだ。

●夜半にめざめる。
室温は三度。寒い。
熟睡したので頭が冴えている。
英語の勉強を二時間ほどした。
新聞配達のバイクの音が響いてきた。
この寒いのに外で頑張っている人がいる。
GGも今少し――と老骨に鞭うち、小佐井伸二の『婚約』を読破。
同じ年の作家だがもうなくなっているのをつい最近知った。
すごくロマンチックな作品だ。

●GGも次回作は恋愛モノでもどうだろうなと……かんがえた。
さてこれからひとやすみして、超能力シスターズを書かなければ。

●そうそう、小林さんの詩集の跋をたのまれて書いた。

詩集の跋
 昔、小林さんが「陸封」という言葉にこだわっていたのを思い出した。あれは林功さんのやっていた「ロマン」という喫茶店の席だったろうか。末広館通りの街角にあった小さな店だった。ああ、この男は言葉を大切にする。やはり詩人になるべくしてなったのだなと感じたものだった。
 そして、いま小林さんの処女詩集のゲラがわたしの前にある。あれから30数年の歳月が流れている。
 プロメテイスが神より火を盗みひとびとにあたえたように、小林さんは詩神、ミューズよりキラメク言葉をかすめとり、その言葉を高々と掲げわたしたちに語りかけた。
 若いときのかれの水晶のように透明で高潔な詩を読むことは、わたしのよろこびだった。
 しばらくぶりで読む小林さんの詩はすごく平昜になっていた。関心の赴くところも〈お孫さん〉であったり〈母〉であったりしている。収穫の田、大芦川、天王橋、紫雲山千手観音。どうやらこの詩人の縄文火炎土器の世界にしめやかに弥生の風が吹きだしているようだ。コレマタたのしいことだ。
 宇都宮でデビュした蕪村が世界にはばたいていったように、小林守城も天空に飛翔していくだろう。より広大な詩の世界で活躍することになるだろう。
 蕪村の「葱買て枯れ木の中を帰りけり」という句をいま舌頭にころがす。ごく卑俗な日常の暮らし中に、詩情をみいだしている句だ。小林さんの詩には黒い土壌が現われ、日常的な風景が現われてきた。彼の詩に山狭の里のsoil、土を感じるようになった。それがsoulを揺るがすような感動をわたしたちに提供してくれる。
 あなたの詩は年齢を遡行してますます若くなっていくようですね。
 わたしは、小林守城と時代と場所を共有できることの喜びを感じている。

 さいごに、小林さんの詩「カンナと鞦韆」から好きな章節を紹介します。

影も皺もない風があたり一面に広がると
明るく利発な少女は向日葵のように
次の夏を想い描いた
顔いっぱいの種子が斜陽に首をかしげる頃
焔の青白い芯を構成してみせた

●小林守城さんの詩集は三月ごろ発刊の予定です。



●あれから、一睡して起きた。あたりに雪はあるものの心地よい快晴。タイトルは雪の朝のままにしておく。

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この恋はうまくいかない/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-12 10:49:21 | Weblog
14

美香はじぶんだけの運命を生きはじめた。

じぶんとアンデイのことばかりおもった。
ほかのことは、あまり気にならなくなっていた。
ただ――指剣が使えないのがきがかりだった。
恋のために盲目になったわけではない。
この恋はうまくいかない。
悲劇に終わるとさえおもっていた。
だからせめていまだけでも。
アンデイのことばかりおもっていたかった。
恋によってもたらされた変化に身をゆだねていたかった。

アンデイは、吸血鬼だ。 
WVだからといっても吸血鬼にはちがいない。
年齢も??? 習慣もちがいすぎる。
でもそれがどうしたというの。
愛し合っていれば、それでいいてはないか。
愛はすべてを越えることができる。

真夜中までねむれなかった。
唇が、キスのあとでほてっているようでねむれなかった。
いままでとちがい〈愛〉について悶々とかんがえた。
それでなおさら目が冴えてしまった。
アンデイと毎日毎夜。
共に生活できれば。
アンデイをいつも身近にかんじていられれば。
どんなに幸せだろう。
アンデイのために、食事をつくり。
洗濯をして……そして、そして子どもをうんで、そだてる毎日。
わたしって、古い女の子だったのね。
アンデイと一緒ならどんなこまごまとした日常でも輝くだろう。
アンデイと日常はいつもきらきら、胸キュンの生活だろう。

アンデイはこなかった。
きょうも面会にきいくれるものときめていた。
まいにちあいにきてくれるものと、おもっていた。

それが、こない。
あらわれない。
さびしい。

なにかあったのかしら。
美香はおろおろしている。
おちつけない。
そして心配になってきた。
なんど携帯しても通じない。
そしておどろいている。
アンデイのことまだ何もしらない。
どこに住んでいるのかもきいていない。

どうしたらいいの?




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美香のfirst kiss/超能力シスターズ美香&香世 麻屋与志夫

2011-02-11 12:24:55 | Weblog
14

アンデイが窓ガラスに映った。

「なんども……声かけた……新宿の夜景を見ていたのですか」

美香ははずかしくて。
ふりかえることができなかった。
廊下の行き止まりにつくられたコーナーだった。
雑誌ラックには乱雑に週刊誌が並べられていた。

美香は左手をかまえていた。
窓の外の夜景にむかって指剣をかまえていた。

それが……。

肩の傷をいたわっているためか。
前につきだした人差し指と中指。
からは、青く燃えたつ剣は現われなかった。
右上腕部の肉をマスターvampireの鉤爪で抉られた。
肉片をもっていかれたためか。
傷が完治していないためでもあるのか。
青い炎がでない。
ガス切れのライターみたい。
チョロっと小動物の舌のような形をみせて、直ぐ消えてしまう。
なんども、ためしてみた。
念をこめて指をかまえ。
チョロ。
それでおわり。
泣きたくなった。

わたしにはもう指剣を呼び起こす念の力はないの。
わたしの能力は枯渇してしまったの。

「どうした、美香。なにが心配なのですか」
「わたしもう、指剣を使えないかも……」
「そんなことはありません。傷が痛むからです。
体が痛むとこころも弱くなるからだよ」

アンデイが美香を笑わそうとしている。
わざと文脈のみだれたことばを使っている。
ソファだけなのでアンデイが美香のとなりにすわった。

もうそれだけで、美香はこころがさわいだ。
2人だけだ。

ほかのことは、あまり気にならない。
ふたりだけの世界。

アンデイのことだけが。
身近にいるアンデイのことばかり。
おもっている。

「それで憂い顔ですか。それで悲しい顔してたのですね」
「わたしもうだめ」

アンデイが美香を胸にひきよせた。
髪をなでてくれた。
アンデイの胸の動悸が美香の頬に伝わってくる。

「なにもしないでいる時間には、
なにもかんがえないで過ごすのがイイのです。
わたしはそうしてきた」

アンデイにとってなにもしないでいる時間ってどういうものなのかしら。
早すぎた埋葬にあったとき。
それとも棺桶のなかでの冬眠。
そんなの伝説。
そんなことがあるわけがない。
ただ、たしかなことはアンデイがながいこと生きつづけているということ。
そのあいだには、うんざりとするほどのアンニュイにみちた時間があったはずだ。
いまが、その時間でないことを美香は祈った。

「美香といるとたのしいですよ」
「よかった。ホントなの」
「マジ。たのしいです」

アンデイの手が美香の手に重ねられた。

「元気だして」

抱き寄せられた。
アンデイの唇が美香の唇にふれた。


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