田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

風評被害に負けるな/分厚い教科書の津波 麻屋与志夫

2011-04-03 01:11:36 | Weblog
4月3日 日曜日
●昨日、ベニマルに買い物に行った。
ボトルの水も十分に棚に並んでいた。
一名様一瓶にかぎらせてもらいます。
棚にはそんな張り紙がしてあった。
でも、震災前とほとんどかわりない品揃えの棚。
ほっと安心した。

●でも、値段は高くなっている商品がおおいらしい。
カミサンが嘆いていた。
だが、欲しいものが買える。
ありがたいことだ。

●地震の直接的な被害はなかった。
瓦屋根が壊れたり。
老朽住宅が崩壊したり。
わが街でも全く被害がなかったわけではない。

●震災後、なにも手につかずぼんやりと三週間過ごしてしまった。
めずらしく、風邪をひいた。
まだ治っていない。
「震災のストレスよ」とカミサンにいわれた。
そうかもしれない。
震災の被害者の辛さを想うとなにもできないじぶんがなさけなかった。

●「お幾つですか」とよく訊かれる。
「まだまだ還暦前です」と嘯く若さがあったのに、
被災地の同年輩の人たちをみていると可哀そうでたまらない。
こちらも、きゅうに年をとってしまった感じだ。

●たしかに風邪が治らなかったのはストレスによるものだった。

●テレビから流れる情報を読みとれない。
風評もいろいろと流れてくる。

●ベニマルでゲキ安のシナがあった。
地元産のイチゴだ。
たぶん、放射能が検出されたというようなうわさでも流れたのだろう。
四パック入、一箱500円。お気の毒に。これでは生産農家では箱代にもならないだろう。
昔は流言蜚語といった。風評の恐ろしさを痛感した。

●もちろん、二箱ほど買ってきた。
風評なんかに負けてたまるか。

●このところ、ぼうっとすごしていたが、新鮮なイチゴを食べたら元気が出た。

●震災後の風評被災からコレで立ち直れそうだ。
なにも恐れることはない。

●それよりも、来週からの新学期。
教科書は来年から分厚くな。塾の教材はそれをさきどりしている。内容も難しくなっている。
この精神的な津波に子どもたちは耐えられるだろうか。
震災の話題にかき消されているが、
これは、たいへんなことだ。
学校や塾の現場での混乱は目に見えている。
塾長としてはまた悩みが増えた。

●ゆとりある教育にならされている。
いままでの教科書でも、ついてこられない生徒がいたのに。
教育現場での苦労はこれから始まるのだ。

●小学生も英語の授業がはじまる。
みんなで、がんばらなくてはね……。
そうとしか、いいようがない。




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直人!! タスケテ(3)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-02 00:01:20 | Weblog
3

直人の従弟だった。
直人は三年たてば従弟の隼人がじぶんの今の歳に近くなる。
それを計算にいれていた。
そして、霧降での三年後の再会を演出した。
ニクイひと。
だがそこまでだった。
思いでにひたっているどころではない。
黒のセダンがフロントガラスを銀色に光らせてBMWと並んだ。
バンとノーズをたたきつけてくる。
強引におどして、美智子たちの車を停止させる気だ。
里佳子がブレーキを踏んだ。
相手の車が遠ざかる。

「美智子、体をひくくして」
「おばさん、わたしこわい」
「がんばって。あなたは鹿沼の翔太郎オジイチャンの孫よ」
 
バシツとサイドウインドが砕けた。
「美智子。かがんで」

「隼人。銃撃されてる。どこ、どこにいるの。たすけにきて」
「もうきている。頭上にいる」 
ばりばりとヘリがホウバリングしている音がする。

「どうする。隼人」
「武器は」
「攻撃ヘリじゃないから。でも、サル彦ジイチャンの猟銃がある」
「ウエンチスターのライフルじゃないか。直人の霊体装甲も着ている。ピストルも入っていた。これで十分だ」

「狙撃されてる。はやく来て」
「路肩に車を止めるんだ。心配するな。いますぐおりる」

クラクションを鳴らして迫ってくる。
威嚇しているのだ。
どうせ逃げられっこない。
嘲笑っているのだろう。 
 
この襲撃がなにを目的としているのか?
なにを意味しているのか?
美智子にはわからない。
だからこそ怖い。

襲撃犯がBMWの後部扉から美智子をひきずりたした。
速く。
隼人。
タスケテ。
速く!!
美智子はパニックをおこした。
うわ言のように、タスケテ。
直人。
隼人と叫んでいた。

里佳子が運転席からとびだしてくる。
必死の形相で襲撃犯をにらんでいる。
「離しなさい。美智子を離しなさい!!」

隼人のヘリが着地した。
襲撃犯の男は信じられないものを見た。
信じられないことが起きた。
ふいに空から男がヘリでおりてきた。
邪魔がはいるなんて想像もしていなかった顔だ。
恐怖に歪んだ顔。
夢中で発砲した。

銃弾は隼人の肩口をかすめた。
青白い炎がコートの肩口で爆ぜた。
隼人は男の首筋に空手チョップをきめた。
銃をつかうほどのことはなかった。
その油断をつかれた。
離れたところに停車していたセダンから狙い撃ちにされた。
まだ運転手がのこっていたのだ。
男の体がぐにやっとはねあがった。
隼人がライフルをかまえて応戦する。

黒のセダンは急発進した。
現れたときと同じように。
唐突に。
逃げていく。

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直人!! タスケテ(2)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-01 00:05:29 | Weblog
2

「オジイチヤンの遺体はそのままでいい。
野ざらし覚悟の人生だったから。
畳の上というか、家の庭で死ねてしあわせよ」
キリコは凄絶な顔に涙を浮かべていた。
庭の苔の上に倒れたサル彦を凝視していた。
涙がキリコのほほを伝って流れおちた。
とめどもなく涙をこぼした。 

急転直下のかわりようだ。
サル彦は鬼神と刺し違えた。
互角の戦いだった。
だが、敵は不死の者。
瀕死の重傷を負ったはずなのに。
現われたときのように。
よろけながらも。
黒い霧とともに森の中に消えてしまった。
……キリコには余裕はなかった。
いまこの瞬間にも鬼神一族の報復があるかもしれない。
黒い霧はまだ森の中に漂っている。
あの霧から鬼神がわいてでる。
キリコを強引につれさろうと。
何処にあるともわからない。
鬼のにつれさろうと。
現われそうだ。
危機は去ったわけではない。
あの霧のどこか見えないところから。
野獣のように危険なものが。
こちらをうかがっている。
それは子どものころから。
感じていた恐怖だ。
牙をむき出しにして。
鉤爪をひからせて。
獰猛なものが。
おそってくる。
鬼族が出現するる前に生じる黒い霧が。
まだ晴れない。
醜悪な顔の鬼族の群れが出現する。
重苦しく執拗な恐怖。
もはやtraumaとなっている恐怖。
「もう――サル彦はいない。わたし怖い」
命がけで、わたしを守ってきてくれた。
サル彦はもういない。
キリコはすがるように隼人につぶやく。
ここを離れなければ。
危険だ。

サル彦の死をゆっくりと悲しむことはできなかった。
涙をぬぐった。

直人の携帯が鳴っている。
「うらにヘリがある。
日光の遊覧飛行に使っていたの。
こうゆう事態になることをジイチャンは予知していた。
鬼神の仲間は大勢いるの。
どこにいってもいるの。
わたしたち東京に脱出する準備はできていたの」
 
キリコは着物からジーンズ姿にかわっている。
操縦席にはいろうとする。

「ぼくがやる。ナビゲーターをたのむ」
「さようならサル彦ジイチャン。さようなら日光」
キリコの目に涙が光っていた。
生まれ育った故郷日光をあとにするのだ……。
遊覧飛行用の小型ヘリが日光の空を飛びたった。


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