やっと探していた背炙り峠の湧き水が見つかりました。私は父親から「不思議なことには峠に水が湧く。弘法水と言う」と教えられたことがあり、一度だけ連れていってもらったような気がしていたのですが、ずっと確認できないままでした。ようやく、この間、雪が融けた斜面から湧きだしている水を見つけました。
水が湧きだしているところは、峠の地蔵からほんの少しだけ村山市側に降りたところで、岩の崖下でした。手を浸すと刺すように冷たくて、直ぐに手を引いてしまいました。水の味は、何の癖もなく、飲みやすいものでした。山の水は、しばしば腐葉土のにおいがする場合がありますが、この湧き水は、一切そういう臭いがありません。完全に地下を通ってきたものであることが分かります。今は塩ビ管から流れ出していましたが、崖下に崩れ落ちている土砂を払いのければ、岩から湧いている姿を見ることができるでしょう。しかし、毎年土砂に埋まるので、峠の管理行為をしてきた畑沢の人達により、塩ビ管を工夫されたものと思います。水の脇には「水神」と彫られた石が立てられていました。文字の彫りがあまり風化していないので、比較的新しい時代に造られたものと思われます。この峠とこの水を大切にしようとする畑沢の人達の気持ちが伝わってきます。それも自動車道ができて、背炙り古道の役割がなくなってきた今までずっと続いているのです。今後もそうありたいです。
さて、この湧き水は、尾根からあまり高低差がありません。普通、湧水があるところは、水源となる大きな山塊を背負っているのが普通ですが、この湧き水は水源と考えられる場所があまりにも小さい気がします。そのように不思議な湧水だけに、「弘法大師が杖を地面に突き刺して水を湧かせた」と伝えられ、「弘法水」と言われているのでしょう。全国に伝わる「弘法水」伝説の一つで、残念ながら弘法大師は来ていないでしょう。
ところで、地形図を見ていると、背炙り峠を含むこの山一帯は、甑岳まで尾根が続いています。甑岳までの途中には、何故か尾根が窪んでいる場所も見られます。「尾根が窪む」というのは中々、普通は考えられません。これも湧き水の不思議さと関係があるのでしょうか。どう思いますか。
なお、背炙り峠の近くには、外にもいくつかの湧水があります。その一つは、地蔵堂西側の急斜面山腹にあります。岩の間から湧き出していますが、そこへ行くには、野生児の体力が必要です。私はまだ野生児でした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます