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三略について、その衰世

2024-10-04 15:01:00 | 読書

 最近、自分の中の三国志ブームを抑えきれず買ってしまった。
 三国志の中で兵法書のバイブル、諳んじるのが軍師のステータスみたいに扱われる『六韜三略』です。

 古代中国、周の文王・武王に仕えた名軍師太公望が伝えたとされる六韜三略。
 そのうち三略は黄石公という人物が撰録し、これまた漢の名軍師・張良へと受け継がれる。後の日本では藤原鎌足、源義経、北条早雲にも影響を与えたとされる伝説の書です。

 まぁ、太公望が伝えたのかどうなのか、本当の出自はよう分からんとのことですがw
 とりあえず目を通すだけでもと。六韜も一緒に買ったんですが、六韜は結構分厚い。とりあえず薄っぺらい三略から読みました。

 漢文の書き下し文と現代語訳が載ってる。三略は文字通り3つの項目、上略・中略・下略で構成されてます。
 ちょっと読みづらかったけど、おおよそ大略は掴めましたかね。

 てか、意外な内容でした。厳密には兵法ではなく、人が上に立つための心掛けってとこ。道徳を説いてる。
 正直読んでて「当たり前じゃね?」ってことばっかり書いてるw

 北条早雲は三略の講義を受け、上略の最初の一文。
 「夫れ主将の法は……」を聞いただけで「分かった!」と兵法の極意を悟ったんだとか。

 もしかしてこれって「そんなん聞かんでも分かるわい」とか、そういう意味なんじゃないか?w
 まぁ、古代にこういう基本的な道徳が大切ってことに気付いたってのが、この本の偉大な所なんでしょう。

 現代で当たり前の価値観が、古代中国では本当に尊い考え方だったてこと。
 春秋戦国時代に成立した本で、平和な時代だからこそ、その有難みが分かるということ。

 それにしたって、やっぱり当たり前やなと思うけどw
 三略が言うには、とにかく賢人を雇いなさいと。雇う時には礼儀を弁えて、給料とか爵位とかちゃんと奮発しなさいと。

 君主は清廉潔白で、国民を大切にしなさい。
 奸臣をしっかり抑えて、賢臣の話をよく聞いて重用しなよ。

 将軍について戦いの心構えも書かれてますが、具体的にどうってことじゃなく。
 兵士が苦しんでる時に、喉乾いただのわがまま言っちゃダメとか、将兵の心を一つにする。そうすれば戦は自然と勝てるよってとこ。

 ちなみに、『柔よく剛を制す』という有名な言葉がありますが、その出自はこの三略なんだとか。
 柔よく剛を制すの後には、強よく弱を制すと続きます。柔弱の大切さを説く。

 ただ柔弱だけもダメよと。使い分けで臨機応変にと。
 本当に当たり前のことばっかり書いてるんですよw

 でも、読んでてドキッとはしますが。
 その当たり前が出来てないのが、今の日本だとも思う。

 読んでて刺さる部分が沢山あった。
 現代でいくら技術や文化が進もうが、やっていることは古代と変わらん。

 悪政や増税、奸臣。あらゆる戒めが書かれてる。本当に当たり前なんだけど、その当たり前を為す難しさ。
 結局、今現在も一緒ってことよね。読むたびに恐怖と絶望が深まる。

 中略の一文には、
 「聖人は天を体し賢人は地に法り智者は古を師とす。故に三略は衰世の為に作る」と。

 今がその衰世なのか。三略は時代を越えた警告なんやと思う。
 今の政治家は三略など読むまい。当たり前だからこそ見落とすこと。

 今の日本を救えるのは、新しくこの三略を読む人やと。
 別に源義経みたく英雄になれというわけではなく、国民一人一人、衰世に備える心掛けが必要なんじゃないか。

 その一人一人が増えた時、国を動かす力になる。
 そう甘くはないのかもしれないが、政治を変えるには国民が変わるしかない。

 その変わる一助に、三略はなると思う。
 俺は三略を読みました。次はあなたの番です。

 では、また。