おジャ魔女どれみと徒然

おジャ魔女のこと、

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孫子について、その始計

2025-01-09 13:09:00 | 読書

 2025年最初の読書感想。
 兵法書の王道たる『孫子』です。

 六韜三略を読み切り、次は孫子。
 なんか順番を間違ってるような気がしますが、まぁ、気分で読んでるんでw

 でも、時代の順番としては合ってるんで。
 六韜三略は我らが太公望、文王・武王が興した周王朝。その周王朝時代の後、春秋戦国時代に成立した兵法書が孫子です。

 春秋戦国は春秋時代と戦国時代に分かれ、周王朝が王族や諸侯に領地を冊封し、それが小国同士徐々に争い始めたのが春秋時代。

 国々が吸収され大国として独立。戦国七雄、漫画キングダム。
 秦により周王朝が滅び中華が統一されるまでが戦国時代になります。

 孫子の著者・孫武は春秋時代・紀元前500年頃に呉に仕えた武将とのこと。
 まぁ、残念ながら確定ではないw 紀元前の話なんでね。

 この孫武はさほど活躍など詳細は分かっておらず、謎多い人物。
 もう1人、孫子の作者と伝えられてるのは孫臏という武将。

 この人物は活躍など事績が詳しく分かってて、星野浩字氏の漫画『臏 孫子異伝』という作品にもなっております。
 大まかにこの2人のどちらかが著者だろうという孫子の成立話でした。

 まぁ、誰が書いたかはどうでもいいことでしょうw
 どうでもいいことなんですが、誰が書いたかは分からないのに時代を越え、武田信玄やナポレオン、ビルゲイツにまで影響を与えた。

 なんだが不思議な感じします。
 それだけの名著、どの時代にも普遍の内容だからこそ現代まで残り続けてるんでしょうね。

 実際読んでみると、結構薄い本なんですが読み進めるの大変だった。
 ちょっと読んでは考えさせられるような。深く凝縮されてる。とにかく面白かったです。

 計、作戦、謀攻、形、勢、虚実、軍争、九変、行軍、地形、九地、火攻、用間の13篇。
 現代の日本語に通じる慣用句が出てきて感心したり、三国志とかに出てくる一文を見つけて興奮したり。読んでて忙しかったw

 謀攻篇『彼を知りて己を知れば百戦危うからず』。
 虚実篇『人を致して人に致されず』。

 ここら辺のことわざになってるような有名な言葉。
 こういうルーツを辿って見つけるの、何とも言えない感動がある。

 虚実篇『兵を形すの極みは無形に至る』。
 『兵の形は水に象る』。『兵に常勢なく常形なし』。

 この言葉は、野村克也さんが口にしてた一文。
 野村さんは中国古典の造詣が深い方で、ここら辺の内容を自分の中で解釈して用いてたのが成功の秘訣なんでしょうね。

 兵法の内容もそのまま覚えてるだけじゃ意味がない。
 常に状況に沿うやり方で。水のごとく無限に変化する。俺も孫子の中だと一番好きな文章です。

 軍争篇は機先を制す戦いを記してる章なんですが。
 『佚を以て労を待つ』。有名な言葉が出ててきて、その後には『飽を以て飢を待つ』と続きます。

 ここは読んでてゾワッとしました。
 仙台の弁当工場とか東大の中国留学生とか。北海道の土地が中国に買収されてたり

 今、日本には至る所に中国が入り込んでますからね。
 孫子は戦わずして勝つことを至上とし、その1つの方策として敵の食を奪うことに重点を置いてます。

 孫子の最後の章である用間篇はスパイの重要性を説いてます。
 今の中国の行動は孫子に沿って動いてるのではと、読んで怖い内容でした。

 九変篇『囲師には必ず欠く』。
 出た。三国志で絶対目にする言葉w

 九変は9つの状況への対応が書かれてるんですが、その中に『餌兵に食らうことなかれ』と。
 この一文を見てたら、俺はワーテルローの戦いを思い出しました。

 ナポレオン最後の戦い。これで致命的になったのがグルーシー元帥の行動。
 プロイセン軍の囮に釣られナポレオンの命令を遵守するあまり、グルーシー元帥の軍団はワーテルローの戦地から離されてナポレオンの敗走に繋がります。

 ナポレオンは孫子に精通してたかもしれませんが、その戦略が部下にまで行き届いてはいなかった。
 孫子は上司自身だけではなく部下にこそ読ませなきゃいけない本なのではと感じます。

 この軍争篇には続けて『君命に受けざる所あり』。
 主君の命令でも受けてはいけない命令があるとも書かれています。

 九地篇『其の首を撃てば尾至り、尾を撃てば首至り、中を撃てば首尾共に至る』。
 蒼天航路で吾粲が言ってたやつ! 見つけた時、雷に撃たれたw

 これ、孫子の引用だったんすね。
 やはり三国志好きは孫子読まんとあかんね。もっと早くに読めば良かった。

 さすがは名著なだけあり、本当に面白い本だった。
 まだ中国古典の積ん読が沢山あるんで、今年はどんどん読んでいきますよ。

 では、また。


六韜について、その「文王、将に田せんとす」

2024-12-05 17:38:00 | 読書

 『三略』に次いで、太公望の兵法『六韜』を読破。
 六韜三略。周王朝、文王・武王の親子に仕えた名軍師・太公望が著した伝説の書。

 六韜と名のつく通り、文韜・武韜・竜韜・虎韜・豹韜・犬韜の6巻60章で構成。
 韜の字は武器を包む袋や鞘の意味。天下を掴む、国を作る、兵を動かす。その力の在り方を示した正に秘伝です。

 ただ、三略と同じく、本当に太公望が著したものなのか。出自はハッキリしてませんw
 誰がいつ書いたんか定かではありませんが、何千何百年の時を越え、現代まで読み継がれてること。その偉大さを表してるのではないかと。

 まぁ、眉唾とまでは行かないけど、話半分で読むのが一番じゃないすかねw
 若干読んでて、二次創作感は否めない。文王・武王・太公望の3人の物語としても読める気がする。

 内容は文王・武王の親子の質問に太公望が答えるという質疑応答を纏めてる。
 最初の文武は文王と太公望の出会いから始まり国作りや治め方。竜で戦争の準備。虎豹犬で戦術戦略の話。

 特に虎韜はいわゆる「虎の巻」という慣用句の語源です。
 こういう時にはこう戦えという、実戦を想定した戦術が丁寧に書かれてます。

 これが結構、詳細に書かれててビックリしました。
 ホントに教科書みたいな感じなんすね。兵法書の王道と言われるだけある。

 六韜三略とセットにされてる理由も分かりました。
 俺は三略を最初に読みましたが。三略は基本的な道徳や心掛けの話が書かれてて。

 でも、それをどうすりゃいいんか、具体的なやり方は全然示されてなくて。結論だけ書かれてるみたいな。
 六韜はその三略の補完をしてるというか。三略で簡潔に書かれてたことをより詳しく説明してるんすね。

 三略を先に読んでたおかげで、分かりやすかったです。
 まぁ、竜虎のあたりは読んでて疲れましたけどw 軍隊の編成やら器具の種類やら、細かく考えてんな〜。

 正直、虎豹犬のあたりは古代の戦争の話なんで。現代で使うことはないんでしょうが。
 文武竜が一番面白かったかな。生活にも活かせる気がする。

 特に竜韜の第22章《将威》が好き。
 刑の上極、賞の下通。もし俺が将軍になったらこうやって人を裁こうw

 でも、三略と共通してるというか。
 結局、事前の心掛けや準備が大事だぞっていうのは変わらんな。

 武王が「敵に退路を断たれて包囲されたらどうしよう」って質問に、
 太公望が「そうなる前に敵情や地形を調べろ」とか「斥候を放て」「いざと言う時に救援を貰えるよう隣国と仲良く」やら。

 身も蓋もないことも言ったりしますw
 それが始めから出来たら苦労せんよっていう。

 まぁ、名軍師とて神様じゃないから。無いものは捻り出せない。
 一応、「包囲を突破して退却しろ」とも書かれてますが。結局、勝つ奴は勝つべくして勝つ。日頃の準備や心掛けが物を言うってのが真理なんでしょうね。

 読み切るの時間かかるかなと思ったけど、意外にあっという間だったかな。やっぱり面白かったですね。
 これで俺も六韜三略を読んで、軍師の仲間入りw どこかの将軍が雇ってくれないもんか。

 とりあえず釣りを始めないとダメかなw
 では、また。


駆けるについて、その少年騎馬遊撃隊

2024-10-14 06:24:00 | 読書

 第13回角川春樹小説賞受賞。
 稲田幸久氏のデビュー作品。広島出身の作家さんとのことで、郷土をテーマとした話。

 時は戦国時代、中国地方に覇を唱える毛利家。その麾下の猛将、吉川元春。
 一度、毛利家に滅ぼされながら復活した山陰の雄・尼子家。毛利家へ復讐を誓う、山中鹿之介。

 両将の激突。毛利vs尼子、布部山の戦いを描いた作品。
 賞の選考委員だった北方謙三氏が絶賛。煽り文には吉川晃司さんも登場w ご先祖様やからね。

 「北方謙三も、これでやっと筆が置けるか?」だって。
 ちょっと褒められすぎな感じありますが、実際褒められすぎですねw

 普通の時代劇小説。面白いは面白いです。
 結構、読みやすいし。堅苦しくない。歴史が苦手な人でも楽しめると思う。

 まぁ、良く言えばライトな文体で話も軽い。
 悪く言うと、薄っぺらい感じはあるかなw

 毛利方、尼子方を交互に描いて、全員主役みたいな。それぞれ信念を掲げ、戦いへ挑む。
 それはいいんだが、ちょっと誇張に書きすぎだな。白々しいというか、人物描写が歯の浮くような感じがしてな。

 特に毛利方。毛利の武将って、そんな良い奴らなんかね?
 まぁ、俺が吉川嫌いってのもあるがw 吉川といや関ヶ原で酷い裏切りをした空弁当の野郎がいるし。

 吉川元春がそんな大した志持ってたんか?
 田舎武将らしく、もっと狭量だったんじゃないか思うが。

 作家の価値観によるとはいえ、なんか美化されすぎな気がする。
 悪者とまでは行かなくても、毛利方はもうちょい薄汚く書いてほしかった。

 それに、どうせ皆、山中鹿之介に肩入れするじゃんw
 毛利好きになる奴とかおんの? 鹿之介を応援するに決まってるじゃん。

 正直、毛利より鹿之介主人公の作品が見たかったなw
 本末転倒な感想になっちゃったけど、でも、まあ、合戦が始まったら胸熱な展開で読み応えありました。

 とにかく読みやすくて頭の中に映像が浮かびやすいのも良点。
 映画にしても面白そうだなと感じる。てか、絶対実写化するやろこれ。

 続編が既に発売されてて、いずれは読みますかね。
 でも、それより最新作の楠木正成の作品の方が面白そうだけどw

 実写化を期待しつつ、次作もレビューしたいですね〜。
 まぁ、次作は上月城の戦いで、読む前から悲しみが湧きますが。やっぱり読むの止めようかなw

 では、また。


三略について、その衰世

2024-10-04 15:01:00 | 読書

 最近、自分の中の三国志ブームを抑えきれず買ってしまった。
 三国志の中で兵法書のバイブル、諳んじるのが軍師のステータスみたいに扱われる『六韜三略』です。

 古代中国、周の文王・武王に仕えた名軍師太公望が伝えたとされる六韜三略。
 そのうち三略は黄石公という人物が撰録し、これまた漢の名軍師・張良へと受け継がれる。後の日本では藤原鎌足、源義経、北条早雲にも影響を与えたとされる伝説の書です。

 まぁ、太公望が伝えたのかどうなのか、本当の出自はよう分からんとのことですがw
 とりあえず目を通すだけでもと。六韜も一緒に買ったんですが、六韜は結構分厚い。とりあえず薄っぺらい三略から読みました。

 漢文の書き下し文と現代語訳が載ってる。三略は文字通り3つの項目、上略・中略・下略で構成されてます。
 ちょっと読みづらかったけど、おおよそ大略は掴めましたかね。

 てか、意外な内容でした。厳密には兵法ではなく、人が上に立つための心掛けってとこ。道徳を説いてる。
 正直読んでて「当たり前じゃね?」ってことばっかり書いてるw

 北条早雲は三略の講義を受け、上略の最初の一文。
 「夫れ主将の法は……」を聞いただけで「分かった!」と兵法の極意を悟ったんだとか。

 もしかしてこれって「そんなん聞かんでも分かるわい」とか、そういう意味なんじゃないか?w
 まぁ、古代にこういう基本的な道徳が大切ってことに気付いたってのが、この本の偉大な所なんでしょう。

 現代で当たり前の価値観が、古代中国では本当に尊い考え方だったてこと。
 春秋戦国時代に成立した本で、平和な時代だからこそ、その有難みが分かるということ。

 それにしたって、やっぱり当たり前やなと思うけどw
 三略が言うには、とにかく賢人を雇いなさいと。雇う時には礼儀を弁えて、給料とか爵位とかちゃんと奮発しなさいと。

 君主は清廉潔白で、国民を大切にしなさい。
 奸臣をしっかり抑えて、賢臣の話をよく聞いて重用しなよ。

 将軍について戦いの心構えも書かれてますが、具体的にどうってことじゃなく。
 兵士が苦しんでる時に、喉乾いただのわがまま言っちゃダメとか、将兵の心を一つにする。そうすれば戦は自然と勝てるよってとこ。

 ちなみに、『柔よく剛を制す』という有名な言葉がありますが、その出自はこの三略なんだとか。
 柔よく剛を制すの後には、強よく弱を制すと続きます。柔弱の大切さを説く。

 ただ柔弱だけもダメよと。使い分けで臨機応変にと。
 本当に当たり前のことばっかり書いてるんですよw

 でも、読んでてドキッとはしますが。
 その当たり前が出来てないのが、今の日本だとも思う。

 読んでて刺さる部分が沢山あった。
 現代でいくら技術や文化が進もうが、やっていることは古代と変わらん。

 悪政や増税、奸臣。あらゆる戒めが書かれてる。本当に当たり前なんだけど、その当たり前を為す難しさ。
 結局、今現在も一緒ってことよね。読むたびに恐怖と絶望が深まる。

 中略の一文には、
 「聖人は天を体し賢人は地に法り智者は古を師とす。故に三略は衰世の為に作る」と。

 今がその衰世なのか。三略は時代を越えた警告なんやと思う。
 今の政治家は三略など読むまい。当たり前だからこそ見落とすこと。

 今の日本を救えるのは、新しくこの三略を読む人やと。
 別に源義経みたく英雄になれというわけではなく、国民一人一人、衰世に備える心掛けが必要なんじゃないか。

 その一人一人が増えた時、国を動かす力になる。
 そう甘くはないのかもしれないが、政治を変えるには国民が変わるしかない。

 その変わる一助に、三略はなると思う。
 俺は三略を読みました。次はあなたの番です。

 では、また。
 

私説三国志について、その天の華地の風

2024-09-28 16:16:00 | 読書

 江森備氏の私説三国志。

 北方三国志に次いで、積んでいた三国志作品を完読しました。
 北方三国志は読むのに1年くらいかかりましたけど、この作品は2ヶ月くらい。すげぇ面白かったです。


 1978年創刊され1995年に休刊となったJUNEという小説漫画の総合雑誌。
 掲載ジャンルは幻想ロマンや耽美。要はBLです。やおいブームの火付け、牽引してきた伝説的な雑誌で、その雑誌の中の企画。

 素人が作品を送ってプロ作家が評価する、小説道場という企画へ、当時素人だった作者・江森備氏が短編を応募。
 その短編が企画内で評価され、江森氏は雑誌でプロデビュー。

 1986年から連載開始、全9巻。
 BL雑誌発という異色の三国志です。


 三国志は色々な、重鎮と言われるような作家の方々が執筆されてますが、それに並ぶほど傑作と名高い作品。
 俺も噂はかねがね。買って何年も経ちましたがようやく読む気が起きた。

 9巻で読みやすかったすね。
 諸葛亮孔明が主人公で赤壁からスタートなんで、話もトントンと早かった。

 本当はもう1巻プラスで短編集が出てるらしいんですが。
 まぁ、読まんで良いかなw この全9巻で赤壁から諸葛亮の死までの一代記となってます。大満足の内容。

 まず1巻。
 いきなりこの作品の特色が一気に出ます。

 諸葛亮と呉の名将・周瑜がモホォの関係にw
 諸葛亮は子供の時、暴君・董卓の奴隷だったという衝撃設定。

 そのスキャンダルがバレ、周瑜に強請られて体を強要されてるという。
 正直、改めて考えるとよう分からん話の流れではあるわなw

 まぁ、日本の戦国時代にも小姓がいたり、古代中国にも勿論男色はあったとは思うが。
 諸葛亮は過去のトラウマがありつつMっ気もあって、周瑜に絆されていくんすね。

 でも、最終的に劉備への忠義を選んで、周瑜を愛していながら毒殺する。
 乙女心ならぬ孔明心で殺される周瑜w 今作の諸葛亮は終始こんな感じで周りを翻弄し続けます。

 ただ、内容自体は演義に沿った展開で、そない目新しくはなかったかな。
 周瑜孔明の関係のスタートダッシュくらい。1巻の時点だと、そこまでドキドキ感はなかった。


 2巻です。
 こっから話の毛色が変わっていく。

 こっからただのBLじゃなく、サスペンス要素。
 政争であったり、ドロドロとした人間関係が描かれていきます。

 赤壁後、諸葛亮に並び立つ天才軍師・龐統が劉備軍へ加入。
 龐統は劉備の養子である劉封を焚き付けて軍内に派閥を作り、諸葛亮と対立します。

 そう聞くと「え? 龐統って劉備の味方ちゃうの?」。
 大抵の人は感じると思うんですが。

 なんでそんなことになるかと言うと、この作品は龐統の呉スパイ説を採用してるから。
 一般的に、劉備を支える龍鳳の二軍師。しかし落鳳坡で敢え無く最後を遂げる非業の人として描かれる龐統。

 大概は劉備の忠臣としての登場ですが、実は劉備の味方になった訳ではなく、呉のスパイ。
 劉備の益州攻めを監視督戦するために来た呉の軍監や役人だったという、そういう説があるんすね。

 まぁ、源義経が実は生き延びてチンギスハンになったレベルで、根拠はないw
 とはいえ、辻褄が合ってない訳じゃないから、多少説得力のある珍説。

 それが今作には組み込まれてて、龐統は完全な呉側というよりかは周瑜の復讐やら諸葛亮への嫉妬だったり。私怨で動く。
 まぁ、結局、乙女孔明にサクッと殺されちゃうんですがw

 ただ、これが話としてよく出来てて面白いんよ。
 それに、そもそも今作は30年以上昔の作品ですからね。

 この珍説は俺も最近知ったくらいで。
 30年前のその当時からちゃんと正史やら資料を読んで、誰かが言う前から疑問や矛盾に気づいて創作に活かす。

 本当に、ただのBLじゃない。
 しっかり三国志への探求、地盤があってこその作品。

 マジでナメてました。お見逸れしました。 
 目から鱗というか、本当に目を見張る内容。2巻から、もうこの作品に首ったけですw

 
 3巻です。
 関羽との関係が良い感じに終わり、フェイメイの件があったとはいえ、もうちょい明るい展開になってくんかなと思ったら。

 この作品はそう一筋縄ではいきませんよw
 3巻は時が飛び、劉備の死に際からスタート。

 そっから益州占領を遡る、振り返っていく。
 龐統を暗殺した余波が広がり、話は次の政敵・法正との対立へ。

 今作の諸葛亮は演義の物語みたく人徳者でもなんでもないから、すぐ人と対立するw
 そういう俗っぽさ、生の感情がよく描かれてて、この作品の特色になってるんすね。

 弟・諸葛均が魏のスパイという、予想だにせん展開で話の複雑さ、底の深さも増し。
 3Pで魏延に犯されたり、忙しい乙女孔明ですw


 4巻です。
 夷陵の戦い、劉備の死を描いてます。

 ここまで関羽や張飛があっさり死ぬの、この作品くらいやろなw
 徐々に孔明の心が劉備から離れていく。樊城夷陵は結構な見せ場だと思うんですが、淡々と話が進む。

 諸葛亮の冷め具合を、文章で表してるんですかね。
 劉備の人称が王や皇帝になって、小説から劉備の文字が消えていく。ここは見てて悲しかったすね。


 5巻です。 南征、孟獲との戦い。
 2巻〜4巻はBLにサスペンスが乗り緊張感が続いてたが、5巻はちょっと気の抜けた展開でしたかねw

 ヘッポコ孔明の南蛮珍道中。
 犯された魏延となんかラブラブなってるし。新婚旅行ですか?w

 5巻中の諸葛亮は色々と腑抜けてて、読み始めはイラつきました。
 初っ端いきなり孟獲に捕まるし、行き当たりばったりなんすよね。

 筆者の作為と取るか、創意と取るか。
 フェイメイとの再会、孔明の情の部分を描き。

 諸葛亮のパブリックイメージというんか、人が想い描く天才軍師の姿を本格的に崩しに来てる。
 今までで一番イメージとの違和感があるかな。

 読む手は止まらないので面白いは面白い。
 けど、カッコいい孔明も見たいねえ。

 それでも5巻全体の創作は素晴らしい。    
 フェイメイことアシマは、造語ではなく本当にある言葉なんすね。

 雲南省・イ族の伝承に登場する精霊の名前なんだとか。
 細かいとこですが、本当に江森氏の三国志に対する知識造詣には脱帽するしかない。

 そのフェイメイに対する扱いも容赦ないw もう舌まで抜かれてるのにw
 祝融の最後も衝撃的。南征は演義の架空キャラばっかですが、そのキャラを活かして生き生きさせてる。

 読み始めは「ん?」と思ったけど。
 正に江森三国志。今のとこ一番面白いかった。


 6巻です。第一次北伐編。
 諸葛亮が自ら涼州へ潜入。隠密で魏を切り崩す、異色の北伐スタート。

 テイ族の阿里、千万など実在人物。徹里吉は架空。史実と架空を混ぜた展開。
 5巻から三国志をはみ出して、作者の独自解釈が目立ってきましたが、堂々と我が道を行く感じ。読者の心を一挙に掴む。ここら辺の切り込み具合はさすがの一言。

 廖立の話が出てきたんも意外。スルーされがちなエピソードやが。
 そっから泣いて馬謖を斬るへ。龐統スパイ説から孔明無能説の採用へw

 見ててヤキモキはするけど、諸葛亮の生の部分。
 別に神通力がある訳でもなく、ただの人間。失敗もする。天才の悪戦苦闘。

 もちろん諸葛亮のカッコいいとこは見たいんだが。
 今思えば、北方三国志は説得力がなかった。孔明を貶めきれてない。

 北方氏も男の子ですからw どうしても孔明をカッコよく描いちゃうんすよね。
 これは男ならしゃーないんすよ。三国志にカッコよさを求めたり。諸葛亮という人物へ愛着が湧いたり。本能のようなもんでしょ。

 でも、江森三国志は違う。諸葛亮を見る目が冷徹で現実的。
 諸葛亮の所業を凄惨なほど描く。リアリティと生の感情。息を飲む展開。
 
 姜維の怪しさが際立ち、サスペンスも戻ってきた。
 読む手がホント止まらん。腹が立つほどの傑作ですねw
  

 7巻です。
 宿敵である司馬懿や劉禅、諸葛亮周辺の話が多い。

 特に蜀内部の話。これ実際ありそうだもんなw
 徐々に諸葛亮の破滅が近付く。チリチリ落ちる砂時計を見てるかのような緊張感。

 それにしても徐庶のささくれ具合よw 味方やったやろお前。
 逆に司馬懿が諸葛亮へ親近感を持つって、なんか微笑ましくて面白い。

 孔明妹や諸葛亮の師匠・華紫陽など存在感のあるキャラが続々登場。
 終盤へ向け、話がどんどん進んでいってます。


 8巻です。李厳との政争です。
 俺の推し武将である李厳。丸々1巻分の登場とは豪華だ。

 まぁ、めっちゃこき下ろされてますがw
 いつか李厳を救済してくれるような作品が出てこないもんすかね〜。

 李厳の扱いは短いながら北方三国志の方が好きだ。
 李厳は諸葛亮に、馬謖同様、北伐敗戦の罪を押し付けられただけって説もあるから。

 諸葛亮による李厳の弾劾は、諸葛亮側だけの意見を抽出してる。
 諸葛亮の意見が蜀漢の史実として扱われてる。歴史は勝者が作る。要は言ったもん勝ち。

 今作の李厳は劉禅にせっつかれ諸葛亮の矢面へ嫌嫌立たされる苦労人、かといって出世やら我欲もありの凡人。
 諸葛亮に遊ばれるだけ、中々見せ場はあったんですかねw
 

 9巻です。五丈原の戦い。諸葛亮の死。
 対魏よりかは味方に殺される、悲壮な末路。

 史実の諸葛亮は病死ですが、今作の諸葛亮は劉禅から直で死を賜るという。
 読み進めるにつれ絶望感が深まる。この9巻は人の愚かさというか、読んでてムカつきますw

 あんな諸葛亮とはいえ、読んでてなんだかだ愛着が湧いてきますねw
 既存の三国志を逸脱する急展開。でも、何故か無理筋とは感じない。

 運良く逃げ果せるものの、付き従うは恋人・魏延のみ。
 司馬懿は遠い西の空へ、命の恩人を想う。

 北方三国志も馬超生存というオリ展開だったけど、「あったかもしれないな」とも。
 この江森三国志も。実際の諸葛亮が感じたことや考えたことは史実からは分からない。

 実際、史実もまるっと信用はできない。嘘や隠し事は絶対あるやろうから。
 三国志が1800年後の現代まで愛されてるのも、別に劉備や諸葛亮が偉大だったからじゃなく、読む手の想像を掻き立てる面白さがあるからなんでしょうね。

 実際のところは分からない。でも、もしかしたら。
 三国志は英雄譚ではなく、ただの恋物語だったのかもしれない。そう感じさせる、哀愁が残る作品。

 久々に長文レビュー書きましたw
 それだけの大作だったと思う。本当に面白かったです。

 では、また。