詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

ブランコ

2010年05月07日 | 
ブランコは揺すって
風と遊ぶもんだとは思いもつかなかった
しゃれた椅子もあるもんだと思っていた

転校したての頃
ブランコはいつも
ウサギや鶏の草採りに飽きると
その擦り切れた板に腰掛けて
海への落陽を見下ろしながら
来もしない誰かを待つ場所だった

ブランコではもう
誰ひとり遊んでいなかった夕餉どき
誰ひとりそのすぐ脇道を
通ることなど一度もなかったのに

日がとっっぷり暮れかかったある夜
背広姿に帽子をかぶった大男が現れては
「もう遅いから家に帰らないといけないよ」と

見知らぬ公園で ひっそりと
淦錆びたブランコをみるたびにいつも
懐かしい旧友に久しぶりにあった気がするのはどうしてだろうか

ああなんて多くのものを捨てながら
生きてきてしまったんだろうか
それでもやっぱりまだ
ブランコを揺すって
風と遊ぶことができない