この国はなんでも
とても豊かな国なのだという
でも生活のために仕方なく
腰痛をおしての老人ホームでのバイトだった
テレビの前に日がな一日
座りこんでいるのは
盲目や 歩けなかったり
寝たきりや 認知症の老人たち
介護など初めてのぼくが心がけたのは
できるだけその話に耳を傾けること
「もうこれ以上生きててもしょうがない」という人が
盲目や歩けない人に多かった
「ここでも虐めや虐待があるのよ」と
ひそひそ声で囁いていた人
話しかけると
断っても断ってもエプロンのポケットに
飴をごっそりと入れてくれて
「ありがとう、ほんとにありがとう」と
何べん何べんもお辞儀するお婆ちゃん
「外へ出たら怒られた」という人
「ほとんど一日テレビでは飽きる」という人
忙しい仕事の合間に
半日振りに話しかけにいくと
「どうしたのかと思ってたよ、淋しかったよ」と涙ぐんでた
大昔の文学少女で盲目で車椅子の○子さん
『老人は新しい場所に移されるたびに、10パーセントの能力を失っていくことが調査で明らかにされている。生活能力だけではなく、生きがいも失われていく』という言葉が身に沁みる
年末年始だけの1週間の老人ホームでのバイト
身体の痛みは
薬で治したりで誤魔化すことができるけど
奴隷状態を強制する社会で生きてきた痛みや
ついには社会から隔離されてしまった哀しみは
忘れた頃にやってきて
まるで綿雪のように音もなく
こころの奥底に降り積もってゆく
昨日の痛みがあって今日の覚醒があり
今日の痛みがあってまた明日という意志が生まれる
この冷酷無比な家畜と棄民の国で
ぼくらの未来ははるかにより
過酷なものとなることだろう
それに備えなければならない
優しさという
ぼくらに残された最後の武器で武装しながら
とても豊かな国なのだという
でも生活のために仕方なく
腰痛をおしての老人ホームでのバイトだった
テレビの前に日がな一日
座りこんでいるのは
盲目や 歩けなかったり
寝たきりや 認知症の老人たち
介護など初めてのぼくが心がけたのは
できるだけその話に耳を傾けること
「もうこれ以上生きててもしょうがない」という人が
盲目や歩けない人に多かった
「ここでも虐めや虐待があるのよ」と
ひそひそ声で囁いていた人
話しかけると
断っても断ってもエプロンのポケットに
飴をごっそりと入れてくれて
「ありがとう、ほんとにありがとう」と
何べん何べんもお辞儀するお婆ちゃん
「外へ出たら怒られた」という人
「ほとんど一日テレビでは飽きる」という人
忙しい仕事の合間に
半日振りに話しかけにいくと
「どうしたのかと思ってたよ、淋しかったよ」と涙ぐんでた
大昔の文学少女で盲目で車椅子の○子さん
『老人は新しい場所に移されるたびに、10パーセントの能力を失っていくことが調査で明らかにされている。生活能力だけではなく、生きがいも失われていく』という言葉が身に沁みる
年末年始だけの1週間の老人ホームでのバイト
身体の痛みは
薬で治したりで誤魔化すことができるけど
奴隷状態を強制する社会で生きてきた痛みや
ついには社会から隔離されてしまった哀しみは
忘れた頃にやってきて
まるで綿雪のように音もなく
こころの奥底に降り積もってゆく
昨日の痛みがあって今日の覚醒があり
今日の痛みがあってまた明日という意志が生まれる
この冷酷無比な家畜と棄民の国で
ぼくらの未来ははるかにより
過酷なものとなることだろう
それに備えなければならない
優しさという
ぼくらに残された最後の武器で武装しながら