詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

年末年始の老人ホームでのバイト(数年前の詩)

2011年04月29日 | 
この国はなんでも
とても豊かな国なのだという
でも生活のために仕方なく
腰痛をおしての老人ホームでのバイトだった

テレビの前に日がな一日
座りこんでいるのは
盲目や 歩けなかったり
寝たきりや 認知症の老人たち
介護など初めてのぼくが心がけたのは
できるだけその話に耳を傾けること

「もうこれ以上生きててもしょうがない」という人が
盲目や歩けない人に多かった
「ここでも虐めや虐待があるのよ」と
ひそひそ声で囁いていた人

話しかけると
断っても断ってもエプロンのポケットに
飴をごっそりと入れてくれて
「ありがとう、ほんとにありがとう」と
何べん何べんもお辞儀するお婆ちゃん
「外へ出たら怒られた」という人
「ほとんど一日テレビでは飽きる」という人

忙しい仕事の合間に
半日振りに話しかけにいくと
「どうしたのかと思ってたよ、淋しかったよ」と涙ぐんでた
大昔の文学少女で盲目で車椅子の○子さん

『老人は新しい場所に移されるたびに、10パーセントの能力を失っていくことが調査で明らかにされている。生活能力だけではなく、生きがいも失われていく』という言葉が身に沁みる
年末年始だけの1週間の老人ホームでのバイト

身体の痛みは
薬で治したりで誤魔化すことができるけど
奴隷状態を強制する社会で生きてきた痛みや
ついには社会から隔離されてしまった哀しみは
忘れた頃にやってきて
まるで綿雪のように音もなく
こころの奥底に降り積もってゆく

昨日の痛みがあって今日の覚醒があり
今日の痛みがあってまた明日という意志が生まれる
この冷酷無比な家畜と棄民の国で
ぼくらの未来ははるかにより
過酷なものとなることだろう
それに備えなければならない
優しさという
ぼくらに残された最後の武器で武装しながら