ロイターによると、12月25日、中国政府は南シナ海で軍を拡大し、人工島を「合理的に」拡張してきたとする報告書をまとめたという。いかにも、東南アジアへの帝国的侵略と思う。
それによると今年は29万平方メートルをカバーする「大規模なレーダー」のほか、地下貯蔵施設や管理棟などを建設したとしている。
また軍による巡視活動を強化したと明らかにしたが、具体的な活動には言及していない。
中国政府が南シナ海で、密かにさらなる建設や埋め立てを進めていることが最近の衛星写真で判明した。同国が今後、この海域でより強硬に領有権を主張する可能性が高いと、外交筋や軍事筋は分析している。
中国は今後数カ月内に、南沙(スプラトリー)諸島の飛行場に戦闘機を初配備すると予想する専門家もいる一方で、この地域を担当する軍事関係者は、中国がすでに新しく建設した施設を利用し、海軍や沿岸警備隊の派遣範囲を東南アジアの広範な海域に拡大していると指摘。
「中国はこれらの大規模な施設を建設しており、同国の民間及び人民解放軍の専門家はいつも、戦略的に適切な時が来たら、こうした施設はフル活用されると明確に述べてきた」。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)で中国安全保障問題を担当するボニー・グレイザー氏はそう語る。
「中国が南シナ海でより強力に自国の国益を主張し始めるのは、時間の問題であり、そのタイミングは、中国が決めるだろう」と、同氏は指摘した。
一方、中国と同海域の領有権を争うベトナムも、スプラトリー諸島にある同国基地で行っていた埋め立て作業と滑走路の延長が完成に近づきつつあることが、衛星写真から判明した。
<嵐の後の静けさ>
スプラトリー諸島で進む大規模な建設工事は、習近平政権がその1期目に高めてきた南シナ海における領有権主張を象徴するものであり、習主席は10月に行われた共産党大会での演説でこの点を強調した。
「南シナ海の島や岩礁で行ってきた建設には、著しい進展があった」と、習主席は共産党大会で語った。
南シナ海問題は、11月3─14日の日程で行われるトランプ米大統領のアジア歴訪においても取り上げられそうだ。
「南シナ海を巡る緊張について、引き続き懸念している。特に、領有権が争われている地域で、埋め立てや軍事化を行ったり、領有権主張のために強圧的な手段に頼ろうとする一部の当事者について懸念している」と、米国務省のマイケル・カービー報道官は述べた。
「われわれは継続的に、中国や他の当事者に対し、領有権が争われている島しょにおけるさらなる埋め立てや施設建設、軍事化を控えるよう呼び掛けてきた」と、同報道官は付け加えた。
ロイターの問い合わせに対し、中国国防省の報道官は、これらの島は中国の領土だとの主張を繰り返した。
「南シナ海にある、われわれの島や岩礁における建設や、必要な防衛施設建設を指して、軍配備の拡大と呼ぶことはできない。南シナ海情勢は、一般的に良好だと考えており、当事者は協力して南シナ海の平和と安定の維持に努めるべきだ」と報道官は述べた。
中国の崔天凱・駐米大使は10月30日、南シナ海問題の解決に向けた地域の努力に米国は「干渉」すべきでないと発言した。
年間3兆ドルもの製品が輸送されるこの海域の長期的安全保障の展望について米国政府が懸念を深めるなか、中国は、領有権を主張する当事国であるフィリピンをなだめようとする一方で、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との対話も加速している。
米太平洋軍のハリス司令官は10月初旬にシンガポールで行ったスピーチで、米国政府は、北朝鮮問題で中国の協力を求めてはいても、もし中国が国際ルールや規範を侵す場合にはその責任を問うと述べた。
「東シナ海や南シナ海における挑発的な行動をやめるよう、中国にさらなる努力を求めたい。こうした領有権が争われている海域で事実上の主権を確立するため、同国は軍事力を拡大し有利な立場を築こうとしている」と、太平洋地域の米軍トップであるハリス司令官は述べた。中国が自身の主権が及ぶと主張する境界線「九段線」による海域は、南シナ海のほぼ全域にあたり、ベトナムやフィリピン、マレーシア、台湾、ブルネイがそれぞれ領有権を主張する海域と重なっている。
<戦略なき戦術>
米政府系シンクタンクのランド研究所が最近発表した米中衝突リスクについての分析では、「発火点」となり得るリスク要因として、南シナ海のランクを引き上げた。
南シナ海について「米中両国の確執における予期せぬ焦点となった」と指摘した同研究では、「発火点」としての同海域のランクを、台湾より上だが、朝鮮半島より下と位置付けている。
米国防総省が中国の主張に対抗するため「航行の自由」作戦で同海域のパトロールを強化するなか、徐々に拡大する中国支配を押しとどめるのに米国政府は苦慮していると指摘する専門家もいる。
排他的経済水域も数で言うと、赤の点線で、いかにも異様。