健康的であること、居心地の良さ、ゆとりといったものはこの家では悲惨にも犠牲にされていた。見栄え、世間の目にどう映るかという体裁が優先されていた。食堂は立派なもので、サロンは堂々たるものであったが、家全体の中でちゃんと家具が揃っているのはこれら二つの部屋だけであった。残りの部屋は空っぽで寒々とし、剝き出しで荒涼としていた。まるで差し押さえの執達吏が目録を作成するときのように、虚栄心が最低限必要なもの以外すべて取り去ってしまったかのようであった。偶然そこに取り残されたかのごとく散らばっているものは家具というより、競売に掛けられなかった残骸のようだった。
フォンデージ夫人の部屋には確かに鏡張りの綺麗な衣装戸棚があり、それはあの颯爽たるトリゴー男爵夫人の友人として、なくては済まされぬものであった。しかし彼女の寝台には、痛ましいことにカーテンすらなかった。
このような点から、この家の主である夫妻の暮らしぶりが自ずと透けて見えた。彼らがいくら裕福そうな上辺を装っても、その下にあるこのような極端な貧窮が彼らを不安に陥れぬ筈があろうか? このような惨憺たる住まいの中で、現実が彼らを苦しめぬことがあろうか!
彼らがまがい物の外見だけを気に掛け、常に落ち着かず、取り乱し、騒々しくしているのは、そういう理由からだ。この悲惨な『我が家』に居なくていい機会を必死になって探し求めていたのはそういう理由だった。この家には世間の目はなんとかごまかすのにぎりぎり必要なものは揃っていたものの、債権者の目となるとそうは行かなかった。
「それなのに、あの人たちは召使を三人も抱えているんだわ」とマルグリット嬢は思った。「つまり三人の敵たち。あの人たちの外見を繕うための血のにじむような苦労を毎日笑いものにして、その傷口を広げてやろうと待ち構えている連中を」
マルグリット嬢は『将軍』夫妻の日常生活に入り込んだ最初の日から、このようなことをはっきり見て取った。彼らは必需品を我慢してまで豊かさを装うという、芸術的な技も持ち合わせていなかった。マルグリット嬢が彼らの招待に応じた時、彼らの財政状態は破綻の間際であり、あらゆるところが綻び始めていたことは明らかであった。すべてがそれを証明していたのではなかったか。御者からのぶしつけな要求、召使たちの横柄な態度、ワインのひと瓶もツケでは売れないという業者、帽子屋からのしつこい支払い請求、そして最後にこのベッドの新しいシーツ。
「そうなんだわ」とマルグリット嬢は自分に言い聞かせた。「今となっては確信が持てるわ。私がここに来たときのフォンデージ夫妻は破産状態だった。だから、あの人たちが息を吹き返し、お金と信用が彼らに戻ってきたのなら、治安判事の仰ったことは当たっている。ド・シャルース伯爵の何百万というお金をあの人たちは手に入れたんだわ……」6.4
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます