計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

満を持して、大学院の教壇に立つ。(1回目)

2009年12月04日 | 気象情報の現場から
 師走の寒空の下、クリスマス忘年会の美酒に酔いしれて奇声を発しながら戯れる群集を尻目に、私は地道にデータ解析や会議、塾講師の日々が続いています。

 そして、今日は片道2時間近く掛かる大学院にて、遂に「計算局地気象学特論 ─ 気象学基礎および風況予測への乱流解析応用 ─」と題して講演1回目(全2回)を実施しました。皆、真剣に聞いてくれました。自分達が普段から良く知っている、または経験している熱流体力学とは違う世界を見て、新たな熱流体分野のインパクトを感じてくれたら良いと思います。

 この一連の準備や今日の第1回目を通じて改めて実感しました。やっぱり気象学は複雑で難しい。私でさえ、今頃になってやっとわかった!と言う内容もあるのですから、初めて聴く学生さんにとっても、難しかったかもしれません。一方、だからと言って簡単にしてしまうと学生さんが学んでいる「熱流体力学」との接点を浮き彫りにした理論を展開する事ができないので、内容の取捨選択や構成はかなり難しいものでした。
 
 今回の主な内容はこんな感じです(ズバリ、力学過程に限定しました)。

【第1回】気象学の基礎知識

 (1)地球大気の運動と力学
  ・地球大気に働く力と空気塊の運動方程式
  ・上空の地衡風と地上付近の水平風
  ・静力学平衡の考え方と層厚の式
  ・大気の大循環と三細胞構造のメカニズム
  ・温度風の関係とジェット気流の形成
  ・傾圧不安定波の発生と熱ロスビー波の数値実験
 (2)擾乱(低気圧・高気圧)の発生と立体構造
  ・(偏西風)ジェット気流と高気圧・低気圧の対応
  ・(偏西風)ジェット気流と温帯低気圧・前線の三次元構造
  ・温帯低気圧のライフサイクル
 (3)局地気象の基礎知識
  ・局地的な気象現象(海陸風,フェーン現象,おろし)
  ・大気の安定・不安定の考え方

 このように「90分」と言う限られた時間の中に、かなりの内容を圧縮しました。今回感じたのは「温度風の関係」の理論(の考え方)が特に難解と言う事。これは確かに難しかったと思います。出発点が同じ「熱流体力学」だったとしても、適用する現象や場の構造と言った諸条件の違い等によって、その後の理論展開がまるで違ってくる、という事はしっかり感じて頂けたのではないかと期待しています。

 また、地球大気の中で幾重にも複雑かつ絶妙なメカニズムが働く事で、日々のお天気が時々刻々と変化していると言う事が伝われば、それで良いと思っています(これが今回、一番伝えたい部分です)。こんなに複雑で難しい「気象」をどのように扱って解析モデルの形まで持っていくのか・・・と言うのが次回のお話です。この部分が、私の長い長い試行錯誤の結晶になるのです。

 これまでも様々なプレゼンテーションを経験してきましたが、今回は・・・約80分間ノンストップで話し続けました。これは自らの最長記録を更新しました。講演終了後は・・・さすがに疲労困憊でした。明日は塾の講師研修(講師会議)があります。また、それ以降もデータ解析や、そして第2回講演に備えての準備等に追われる日々になるでしょう・・・。

コメント
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