梅雨前線の動きも活発になってきました。
この時期になると「湿舌」と言う用語を良く聞くようになります。私もお世話になっている、日本気象学会の機関誌「天気」の2010年12月号に、新用語解説「湿舌」が掲載されています(http://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2010/2010_12_0043.pdf)。
この「湿舌」という言葉は、高層天気図上で「梅雨前線の南側沿いに、水蒸気を多量に含む温かい気流(湿暖流)が舌状に張り出している部分」を指して言われることが多いように感じます。しかし、厳密な定義は「梅雨期の高度3km付近に現れる梅雨前線帯に沿った舌状の形をした湿潤な領域。前線帯での対流活動の結果として上空に下層の水蒸気が運ばれることで形成される」とされているようです。
この湿舌がどのようなプロセスで形成されるのか、絵に描いてみました。
(1)下層では、南側の温暖・湿潤な気団からの流れと北側の相対的に低温で乾燥した気団からの流れがぶつかるところで収束帯(梅雨前線帯)を形成されます。一方、上空では西風が流れています。
(2)下層の収束帯付近では次第に上昇流場が形成されます。
(3)収束帯の南側から、南風に乗って水蒸気が(水平方向に)輸送されます。この水蒸気はこのまま上昇流に乗って、さらに上空へと(鉛直方向に)輸送されます。これに伴って、対流雲が形成され、または発達します。
(4)下層から熱や水蒸気が持続的に供給されるため、対流雲はどんどん発達します。また、上空に昇った水蒸気は、上空の西風に乗って東側に(水平方向に)輸送されます。また、集中豪雨を引き起こす水蒸気の大半は高度約1km以下の対流混合層内に蓄えられているようです。
(5)やがて上空では、周囲よりも湿潤な領域(高相当温位域)が東西方向の帯状に形成されます。これが高層天気図では「湿舌」として現れるのです。
「湿舌が大雨をもたらす」のではなく、「湿舌の位置をもとに大雨となりやすい場所を読み解く」と考えるとわかりやすいかもしれませんね。