計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

冬の気候の特性要因図

2021年03月28日 | 気象情報の現場から
 長かった冬も終わろうとしており、春の足音が聞こえてきました。この冬は厳しい寒さと大雪に見舞われた一方、先の冬は記録的暖冬となりました。

 そこで、各々の特徴・背景を「特性要因図」に整理してみました。ちなみに、特性要因図(フィッシュボーン・ダイヤグラム)はマーケティングや製造業の品質管理(QC)などで用いられます。

 まずは、この冬(2020-2021)について整理してみましょう。


 この冬の大雪の背景と特徴は大きく分けると、上空では「寒気の南下が顕著だった」こと、そして下層では「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」が幾度も形成されたことです。

 上空において「寒気の南下が顕著だった」要因は2つあり、「熱帯対流→偏西風の西シフト」および「負の北極振動」に分けられます。

 さらに、「熱帯対流→偏西風の西シフト」の背景には「ラ・ニーニャ現象」の影響があり、「負の北極振動」の背景には「成層圏突然昇温」の影響があります。各現象の詳しいことは、こちらの過去記事が参考になると思います。

・大雪の3つのキーワード
https://blog.goo.ne.jp/qq_otenki_s/e/0ad16b79a51ca2a068574ff7c01e7efa

・成層圏突然昇温
https://blog.goo.ne.jp/qq_otenki_s/e/e67f6aaf053a453e4b72acf1f2f80dc3

 下層においては「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」が幾度も形成され、平野部での大雪を招きました。これは冬型の気圧配置の影響でもありますが、より詳しい背景についてはこちらの記事が参考になると思います。

・平野部にはり付く雪雲の背景
https://blog.goo.ne.jp/qq_otenki_s/e/74f0daab9907570e92870cf480026987

 続いて、先の冬(2019-2020)について整理してみましょう。


 先の冬の暖冬の背景と特徴は大きく分けると、上空では「寒気の南下が抑制された」こと、そして下層では「冬型の気圧配置が続かなかった」ことです。

 上空において「寒気の南下が抑制された」要因は2つあり、「熱帯対流→偏西風の東シフト」および「日本付近の偏西風の北偏」に分けられます。

 さらに、「熱帯対流→偏西風の東シフト」の背景には「エル・ニーニョ現象」の影響があり、「日本付近の偏西風の北偏」の背景には「インド洋ダイポールモード現象」の影響があります。各現象の詳しいことは、こちらの過去記事が参考になると思います。

・気候変動と暖冬・寒冬
https://blog.goo.ne.jp/qq_otenki_s/e/770982dc743e74e277acc993d545aeab

 こうしてみると、特性要因図は簡易な表記でありながら、様々なキーワードのつながりを通して現象のプロセスの全体像を俯瞰できます。この手法は今後「使える」かもしれません。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 10 years have passed since ... | トップ | 知のテーパ »

気象情報の現場から」カテゴリの最新記事