昨日(7月末日)、(公社)日本気象学会の機関誌「天気」7月号が届きました。この中で「降水日数を指標とする天候デリバティブの価格付けに関する検討」と題した私の「調査ノート」も掲載されています。

2月には(一社)日本気象予報士会の研究成果発表会で「降水日数を指標とする天候デリバティブのプレミアム算定の試み」と題した研究発表を行いましたが、この内容をさらにアップグレードしたものを、学会誌「天気」に投稿したものです。
さて、広く知られている事と思いますが、気象条件の影響を受ける事業は少なくありません。そのような事業において「気象情報・気象データの活用をどのような形で進めて行けば良いのか」は重要な課題です。
現在では、気象予測を基に商品の発注・在庫管理を行う「ウェザーマーチャンダイジング」は広く知られておりますが、この他にも、ロジスティクス(物流・商品の輸送など)も影響を受けます。特に大雨や大雪の際は商品が販売店まで届かず、販売期間の損失につながることもあります。
また、気象予測を販売管理に活用できるのは、あくまで(意思決定から結果が出るまでの)リードタイムが「短期」のものに限られます。リードタイムが「長期」のものになればなるほど、気象要因の不確実性の増大に伴い、商品需要や売行などの予測も難しくなります。
そこで、予め想定される悪条件が実現した場合のネガティブな経済効果(天候リスク)に対して保険を掛ける意味で「天候デリバティブ」という対応策が選択肢として浮上します。これは厳密には「保険商品」ではないのですが、リスクマネジメントの一環(リスクの移転)として活用できる店頭デリバティブとして金融商品化されています。
そして、天候デリバティブに限らず、デリバティブ取引は「金融工学」を基に開発されています。つまり、天候デリバティブを理解するためには、少なからず金融工学を学ばなければなりません。
金融工学と言いますと「株価などの金融資産を上手に運用してお金儲けする」というイメージがありますが、その本質は「不確実性を伴って時間と共に変動する数量の振る舞いについて、確率論的にアプローチする」ことにあります。
金融資産に限らず、気温や風をはじめとする気象要素もまた「時間と共に変動する数量」であり、予測対象の時期が将来であればあるほど「不確実性が増す」という点も似ています。
従って、金融工学の手法(Black-Scholesモデルなど)をそのまま気象予測に適用することはできないとしても、金融工学の発想や考え方(仮定の立て方やモデリングなど)から学べるものはあるのではないか、と感じています。

2月には(一社)日本気象予報士会の研究成果発表会で「降水日数を指標とする天候デリバティブのプレミアム算定の試み」と題した研究発表を行いましたが、この内容をさらにアップグレードしたものを、学会誌「天気」に投稿したものです。
さて、広く知られている事と思いますが、気象条件の影響を受ける事業は少なくありません。そのような事業において「気象情報・気象データの活用をどのような形で進めて行けば良いのか」は重要な課題です。
現在では、気象予測を基に商品の発注・在庫管理を行う「ウェザーマーチャンダイジング」は広く知られておりますが、この他にも、ロジスティクス(物流・商品の輸送など)も影響を受けます。特に大雨や大雪の際は商品が販売店まで届かず、販売期間の損失につながることもあります。
また、気象予測を販売管理に活用できるのは、あくまで(意思決定から結果が出るまでの)リードタイムが「短期」のものに限られます。リードタイムが「長期」のものになればなるほど、気象要因の不確実性の増大に伴い、商品需要や売行などの予測も難しくなります。
そこで、予め想定される悪条件が実現した場合のネガティブな経済効果(天候リスク)に対して保険を掛ける意味で「天候デリバティブ」という対応策が選択肢として浮上します。これは厳密には「保険商品」ではないのですが、リスクマネジメントの一環(リスクの移転)として活用できる店頭デリバティブとして金融商品化されています。
そして、天候デリバティブに限らず、デリバティブ取引は「金融工学」を基に開発されています。つまり、天候デリバティブを理解するためには、少なからず金融工学を学ばなければなりません。
金融工学と言いますと「株価などの金融資産を上手に運用してお金儲けする」というイメージがありますが、その本質は「不確実性を伴って時間と共に変動する数量の振る舞いについて、確率論的にアプローチする」ことにあります。
金融資産に限らず、気温や風をはじめとする気象要素もまた「時間と共に変動する数量」であり、予測対象の時期が将来であればあるほど「不確実性が増す」という点も似ています。
従って、金融工学の手法(Black-Scholesモデルなど)をそのまま気象予測に適用することはできないとしても、金融工学の発想や考え方(仮定の立て方やモデリングなど)から学べるものはあるのではないか、と感じています。
貴殿の当該論文は、現実に契約されている天候デリバティブのプレミアムの理論値を一般的とも言える価格評価式を用いてご自身で計算し、その結果が契約例の金額に良く一致したというものです。
もっとも、そもそも契約例のような天候デリバティブは、相対取引であり、これを販売する金融機関において理論的に計算したプレミアムを元に販売価格を決定しているはずです。
そうしますと、ご自身であらためて計算した値が金融機関の計算値とよく一致したとする貴殿の当該論文の本来の趣旨というものはどのようなところにあるのでしょうか?
当該論文の記述のみでははっきりとはわかりませんでしたので、ご教示をいただけると幸いです。
本来の趣旨は「天候リスクの評価方法を計算する方法」の一例(一つの考え方)を示すことにあります。
気象情報をビジネスに活用する試みは行われておりますが、市場規模が300億円程度で推移するなど、気象サービス事業全体としては伸び悩んでいる状況です。その背景として考えられるのは、「天候リスクが正確に評価することが難しい」という事情ではないかと考えています。
釈迦に説法と思いますが、「天候デリバティブのプレミアムの理論値」は「将来時点におけるリスク」を「現在(契約時点)の価値」に換算したものと私は認識しています。
そこで、「天候デリバティブのプレミアムの理論値を一般的な価格評価式を用いて計算する」過程を示すことで、「天候リスク」の評価方法の一例を示すことを試みました。さらに、金融機関の計算値との比較は、今回用いた計算手法の妥当性を確認するために行いました。
ここからは論文の範囲を超えますが、例えば、企業の経営幹部に「天候リスク」を説明するにしても、例えば「平均気温が○℃上がる」というよりも「平均気温が○℃上がると、御社の場合は売上に換算すると△△円の減となるリスクがある」というように、「金額」で言い換えた方が判りやすいのではないか、と思います。
末筆になりますが、ジョン=ハルを読まれているとの事なので、デリバティブについても色々と教えて頂ければ幸いです。