計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

気象学は難しい。

2007年09月20日 | 気象情報の現場から
 昨日は珍しく、アニメに関する話題を書きましたが、さすがにそろそろ気象関連の話題も書かなくては・・・と感じてきました。

 突然ですが・・・この度、CAMJの会員の方からも勧めて頂きました社団法人 日本気象学会に入会しました。諸般の事情が許せば、2008年度春季大会での「デビュー」を視野に入れています。

 早速、機関紙の「天気」が届きましたので見てみると、その中には「2006年度学位論文紹介」が掲載されていました。気象学に関連する研究の修士及び博士学位論文のタイトルが色々と紹介されていました。どのテーマも、題目だけからは内容が想像できないくらい難しいですね f(^^;)。大学の気象学課程がどのような教育・研究を行っているのかはイマイチよく分かりませんが、とにかく難しい事をやっているんですね。

 最近、各大学院の入学試験の気象学の問題も解いているのですが・・・途中で放り投げたくなるような難しさです。まあ、数少ない気象関連の専門書を総動員して何とか答案をまとめているのですが、大学で気象学を専攻している皆々様にとっては、こんな知識が当たり前なんですよね・・・(すご~~い)。とは言っても気象予報士である以上、このレベルは何とかマスターしておきたいものです。大学院の入試で問われる事は、大学学部レベルの専門知識です。これくらいできないと気象分野の「学士(理学)」とは見なされないよ、という大学側のある種の意思表示ですからねぇ。

 そしてこの試験問題は、大学によって面白いように難易度が違います。しかも毎年毎年出題される内容が、これでもかこれでもかと言うほどに様変わりしています(つまり難易度も年によってマチマチなのだ)。特に難しくてコノヤローと思った大学は・・・某旧帝大院の問題です(←ちなみに東京大学大学院の問題はまだ見てません)。同じカテゴリの旧帝大院でも難易度が結構違ってきます。

 参考までに申しますと、気象学の問題が出題される専攻は、理学系の地球物理学専攻、地球科学専攻、環境科学専攻、大気海洋学専攻、地球惑星科学専攻等の過去問を当たってみると良いでしょう。また、気象学を専攻していなかった気象予報士の皆様、これらの問題を解くのはシンドイですがかなり勉強になります。尚、気象学を専攻していない方で気象予報士試験に向けて勉強されている皆様は、とりあえず止めといた方が良いです。気象予報士試験に合格した後で、さらなるパワーアップとして勉強される事をお勧めします。(それにしても、最近は大学院の入試問題もネットで公開する時代なんですね。下手な出題はもうできませんね・・・)

 さて、良く聞く話ですが、異なる専門分野の大学院を受けるというのは、並大抵の難しさではないですね。国家公務員採用試験を(本来の専攻からすれば「機械」で受けるのが筋なのにも関わらず)敢えて「物理」区分で受験してものの見事に撃沈した過去を持つので、今更のようにその難しさを実感しています。

 そんなわけで、冒頭の「天気」の学位論文で紹介された皆々様は、このような難しい試験を突破されたわけですから・・・やっぱり凄い。ネット上のスラングでいうところの「マジネ申!!」っていう所でしょうか。それ以前に、根本的な専門分野が異なるのだから仕方が無い、という事なのかもしれませんね。ま、そういうことにしておきましょう!!

 ちなみに同じ気象でも工学系の知見をフルに活用しているのが私の研究アプローチです。理学的な知見、工学的な知見、そして気象予報士としての経験、これらが三位一体となって合体し、私の研究が進められています。(あなたと合体したい・・・←ハイ!、しつこいですね。)

 私が現在進めている主な研究テーマは次の3つです(実際はこの他にも形になっていないテーマの卵が多数?あります)。

(1)山形県置賜地方およびその周辺地域における冬季局地風の解析(計算流体力学・乱流工学)
(2)半径方向に温度勾配を有する回転二重円筒内に発生する渦・波動の数値解析(回転流体力学)
(3)ニューラルネットワークを応用した局地降水ポテンシャル予測法の研究開発(知能情報処理・人工知能)
 ※この他にも局地的な気象特性に関する文献調査や数値解析手法の開発、天気予報に関する事などなど・・・

 (1)はもうCAMJの会報「てんきすと」で紹介されています。(2)もこのブログで何回か紹介しました。と言うわけで現在は(3)をメインに取り組んでいます。

 ニューラルネットワークそれ自体は電子情報工学の専門分野ですので、機械工学ではなかなかお目に掛かる事はありません。ぶっちゃけ独学です。ただ、大学院で生体工学に近い分野の独立専攻に籍を置いていたので、ニューラルネットワークのお手本となった神経細胞(ニューロン)についての講義を受講する機会があり、前の職場ではエレクトロニクスの感覚を養いました(Verilog-HDLはもう忘れてしまいましたが)。

 学生時代に「どこかの気象会社がニューロ天気予報を実現した」と言う噂を聞きつけて、凄いプロジェクトが動いているんだ~~・・・と驚いていたものですが・・・私は今「一人で」ニューロ予測の研究を進めています(爆)。最近、ニューロ予報という言葉を聞かなくなって久しいですがそれだけニューロによる天気予報が当たり前になったのか、それとも・・・。そういえば、日本気象学会での学会発表や各種学会の論文発表の情報を見ても、余りこの手の発表は見られません。なんとな~く、分かるような気がします。

 結論としては、最後はやはり気象予報士の判断に委ねざる得ない、と言う所に行き着くのだと思います。なぜそうなってしまうのか、今後論文の紙面上で明らかにしたいと思っています。
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