◎孤舟蓑笠の翁、透徹した孤独感を生きる
豊橋から渥美湾に沿って田の中に細い道があったが、これを天津繩手と言い、不遇な友人を思う芭蕉の句
二人見し 雪は今年も 降けるか
芭蕉
(大意:去年は配所にあって不遇の君と二人で見たあの天津繩手の雪はまた今年も降っているだろうか? )
そんな感慨も漂泊の旅人として、やや力んで暮らす自分がある。
月雪(つきゆき)とのさばりけらし年の暮
芭蕉
(大意:花鳥風月と一年中突っ張って生きたことよ、年の暮れ)
(1686年作、『あつめ句』所収)
さらに冬の天津繩手でもう一句。
あまつ縄手は、田の中に細道があって、海から吹上がる風がとても寒い所。
冬の日や馬上に凍る影法師
芭蕉
これは、山水画の孤舟蓑笠の翁の姿であって、透徹した孤独感を生きる覚者の姿であって、『さび』の極み。雪国の今度の冬は雪が多い。