明日20日は春分の日で「彼岸の中日」です。
お彼岸はこの日を挟んだ前後3日間の7日間を言います。
この時期は昼と夜の長さがほぼ同じことから、仏教の教えでは、西の方角にあるとされているあの世とこの世の距離が最も近くなると考えられています。
そこで墓参りや法要を行うことが昔からの日本の習慣となっているのです。
「彼岸の墓参り」
お彼岸は、お墓に参ってご先祖様を偲び、故人と向き合う日とされているのですが、それに加えて自宅にお坊さんを呼んで「彼岸会」という法要を行うご家庭もあり、ここではお経を唱えて頂きます。
でも、このお経、一体誰のために唱えてるのでしょうか?
「お経は誰のためか?」
以前、NHKの番組「チコちゃんに叱られる」の中で、このテーマを取り上げていました。
それによると、お教は決して亡くなった人のためのものではなく、周りで聴いている、生きている人達のためのものだと紹介していました。
そこで今日は、録画しているチコちゃんの番組を再生して、「お経」について取り上げたいと思います。
「お経とは」
番組の中で解説していた花園大学の佐々木教授によると、お経について以下のように説明していました。
お経の中身は「美しい仏の世界」「未来の予言」などが含まれている場合がありますが、その内容は主にお釈迦様からの生き方についてのアドバイスだということです。
お経は紀元前5世紀ごろにインドで最初に誕生したと言われていて、そのお経の元となる教えを説いたのはブッタとも呼ばれているお釈迦様です。
お釈迦様は裕福な家庭の子供でしたが、生まれてから1週間で母親と死別したこともあり、その後どんな人にも必ず老いや病気や死が訪れるという世の中の現実を見て苦悩するようになりました。
そして29歳の時に家を出て修行に入り、断食などの様々な苦行や深い瞑想修行などを通して、35歳の時に菩提樹の木の下で悟りの境地に入りました。
「お釈迦様の悟り」
お釈迦様の悟りとは?
悟りは表現によっていろいろあるものの、代表的なものが「三法印(さんぽういん)」だそうです。
三法印とは、
・諸行無常(しょぎょうむじょう)
・諸法無我(しょほうむが)
・涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)
の三つの教えです。
「三法印」
「諸行無常」は、この世の全てのモノは変化し壊れていくという意味。
「諸法無我」は、自分中心にものを考えてはならないという意味
「涅槃寂静」は、欲望や憎しみなどの自分勝手な思い込みをなくすことで、苦しみが消えて楽になるという意味です。
三法印と言うのは、決して私たちがこの世で安楽で快適、豪華な生活ができるようになりますよ、と言っている訳ではないんです。
よりよい生活をひたすら追い求めるという気持ちを捨てるだけで楽に生きられますよ、と言うのが三法印の軸になる考えです。
「お経」
お釈迦様は80歳で亡くなりましたが、生前残していた教えを後で弟子たちが文字にしてまとめたものがお経です。
仏教は生まれてから約2500年経つという歴史がありますが、後の弟子たちが時代や社会のニーズに合わせて書き換えたり、違う解釈を加えたりしながら様々なお経のバリエーションが誕生しました。
その内どのお経を拠り所にするかによって、いろんなグループに細分化したのです。
それが現在の日本でいうところの浄土宗や日蓮宗、真言宗などの宗派なのです。
その内、非常に人気の高いお経として佐々木先生が挙げたのが般若心経です。
般若心経は大般若教という600巻に及ぶ経典を1巻262文字に要約したお経です。
以上のように、お経はお釈迦様が三法印の考えを基に、弟子たちに残した教えをまとめたものがお経ということです。
なので、法事などで唱えているお経は、参列している人たちへの生き方のアドバイスなのだそうです。
長くなりましたので、以下は関心のある方だけお進みください。
「般若心経の訳」
般若心経の訳については駒澤大学の大澤邦由専任講師が解説されています。
「訳」
仏になるための最高の智慧について説明するお経。
観音様は智慧を身につけるために凄い修行をしました。
そして私たちを形づくるすべての要素が、実は実体のない仮のものだと見抜いたのです。
それによってすべての苦しみを消すことができました。
物質は実体のないものです。
実体のないものが物質です。
更に様々な心の働きも全て実体のないものです。
この世の全てのものは実体がないのですから、生まれたり、消えたり、汚れたり、綺麗になったり、増えたり、減ったりすることもありません。
つまり、実体がないという状態は、物質や感覚などの認識がないこと。
目、耳、鼻などや、色、音、香、味など、私たちが認識している世界はすべて空であり実体がない。
更に愚かさもなく、その愚かさがなくなることもない。
老いも死もなく、老いと死がなくなることもない。
苦しみにも、その原因にも、原因を消すための方法にも実体がない。
悟りの智慧にも悟りにも実体がない。
それゆえ、最高の智慧を完成させてブッタを目指す者は、心に何の妨げもない。
なんの妨げもないので恐れがなく、誤った考えから遠く離れており涅槃に入れるのである。
過去、現在、未来において、悟りを開いたものは智慧を完成させたことによって、本当の悟りを得るのである。
この教えを誰でも覚えられる短いフレーズにしたものがある。
それは絶対間違いのないこの世で最高の言葉である。
それを唱えると全ての苦しみが消える。
おお、悟りの世界へ行った者たちよ君たちの悟りの境地に幸あれ。
以上
最後は激励で締めくくられている、これが般若心経の意味です。
以上のように、般若心経の軸になるのは実体がない「空(くう)」という考え方です。
思い悩むことがあっても、何事にも執着せず、囚われずに生きていこうというアドバイスなのです。
と言うことで、「お経は誰のために唱えるのか?」という番組では「お経は生きている人たちに向けたお釈迦様のアドバイス」という結論でした。