一流の伝統芸能というものは本当にすばらしい。
1786年の初演から数えて222年の時を経、伝統を守りつつレベルアップを
重ねながら、世界各国で数え切れない程の上演が繰り返された作品。
「フィガロの結婚」。
来日公演初日、開演初半のオーケストラの多少の不揃いさはあったものの、
現代風斬新な演出に多少面食らったものの、
また、ウィーンのスターツオーパー(ウィーン国立歌劇場)中央7列目で、
歌手の喉から溢れ出る声の粒子を体感、本当に良い具合に音を吸収する
すばらしい劇場ですばらしい音響を経験したおかげで余計に感じてしまう、
ほとんど吸収されないままホールに残る残響音が多少気になったものの、
伯爵夫人、スザンヌ、伯爵、フィガロ役の4人の
電気を通さずにもホールを通り抜けるその歌声には全くぶれがなく、
人の心を圧倒する力に溢れていた。
特にスザンヌ役のキラキラと宙を舞いながら浮遊する歌声は
直に優しく顔をなでるような感触を残しつつ、
知らず知らずのうちに私の疲れた心を浄化していった。
すばらしい!
ただ、ただ、すばらしい!
大好きな2幕の伯爵夫人のアリア「愛の神よ、安らぎを与え給え」、
3幕の「楽しい日々よ、どこへ」と、伯爵夫人とスザンヌの「手紙の二重奏」も、
期待を全く裏切らず、心が打ち震えた。
17:30開演。
午後休取りつつギリギリまで働き、開演ギリギリのタイミングで入場。
仕事後の疲労感とオフィスの余韻を引きずったまま、ホールに駆け込む
感じにはちょっと参ったたけど、コンサートが終わった後の昂揚と幸福感は
筆舌に尽くし難い。
2008年4月。
名古屋でフィガロを体感、感動。
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