2019年春のブログです
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河合隼雄さんの『対話する生と死-ユング心理学の視点』(2006・だいわ文庫)を再読しました。
これもかなり久しぶりで、小さな文庫本なので、本棚の片隅にあったのを見つけて読んでみました。
しかし、中身は充実していて、いい勉強になりました。
さすがは河合さん!です。
今回、特に印象に残ったところを一つ、二つ。
一つめは、治療者の私が、もう一人の私としての病者を自覚すると、病者の心の中のもう一人の私としての治療者が働きはじめる、ということ。
深い言葉です。
転移・逆転移を表現しているとも言えそうですし、患者さんの自己治癒力の発現の機序を語っているようにも思えますし、さらには、もっと深いことがらを表現しているようにも思えます。
たぶん北山修さんも同じようなことを話されていて、もっともっと考えてみたいな、と思いました。
二つめは、治療者が安定してそこにいることの大切さ。
治療者が患者さんを理解しつつ、そこに一緒にいることの重要性を説きます。
これはもう、精神分析でもさんざん話題になっていることがらですね。
三つめは、心理療法において練習を積むことの大切さ。
鍛えたうえでこそ、とっさに出てくることが理にかなう、と述べます。
そして、苦しくても頑張りぬく姿勢が大切で、いい気になると駄目なことが多い、と警告をされます。
一般、初心者向けの本ですが、丁寧に読むと、かなり奥深い、いい本だと思います。
さらに、謙虚に、勉強を続けようと思いました。 (2019.4 記)
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2020年11月の追記です
練習を積むことの大切さは、他の世界でも同じでしょうが、心理療法でもいろんな方が強調されています。
まずは基本を身に付ける、型を究める、などなど。
そのうえで、土居健郎さんのいう、出たとこ勝負、が重要になるのかもしれません。 (2020.11 記)