ロバート・ルイス・スティーヴンスン&ロイド・オズボーン『引き潮』
スティーヴンスンと聞けば『宝島』かな? と気づくが、フルネームだとわからない。
その義理の息子ロイド・オズボーンは、もっと知らない。
そんな2人の合作があっただなんて、知らないことだらけ。
カバーのイラストは、少年向け冒険小説の雰囲気。
クラシカルな感じをまといつつ、どことなく新しいセンスも見える。
気楽に読むつもりで本を開いたが、この小説は思っていた以上に奥深かった。
南の島で、ホームレスにまで落ちぶれてしまったイギリス人の男3人。
ふとしたことから船を盗み、その積荷を売りさばいて一儲けしようと企む。
しかし航海中、食料が尽き、海図にない島にたどり着く。そこは楽園か、それとも……。
大雑把に冒険小説っぽく書くとこんな感じだ。
男たちが食い詰めた原因はさまざまだが、1人は優秀な大学を出た、酒も飲まない真面目な男。
にもかかわらず、仕事ぶりが悪く堕落していく。
不器用で世渡りが下手なだけなのだ。
彼の正義感が、ちょっと異常なほかの2人を、正常な視点で見続ける。
あとあと、そのことが命運を分ける。
期待していたものとは違う緊張感。
全然OK、面白い。
もう一度『宝島』を読んでみようか。
装丁は山田英春氏、挿画は影山徹氏。(2019)