ジョン・ファンテ『ロサンゼルスへの道』
父親が亡くなり、一家の稼ぎ頭として母と妹の面倒をみる18歳のアルトゥーロ。
しかし仕事はどれも長く続かない。突然「うんざりだ」と言って辞めてしまう。
周囲の人たちを小馬鹿にし、気取った言い回しでやたら饒舌に意味のないことを並べて煙に巻く。いや、ただうざいと思われているに過ぎない。
まとまったものを書いたことがないのに、自分は作家だと言い、ノートを持ち歩いて何かを書いている振りまでする。
そして妄想が凄まじい。一瞬姿を見かけただけの女性と恋愛関係になることなんてお手のもの、ある時は突然走り出してオリンピックのランナーになっている。
なにひとつ共感できない最低な男だ。
ところが、劣悪な環境の缶詰工場での仕事に我慢する。
初日は、サバの強烈な匂いに胃がからになるまで吐いてしまい、そこで働く人たちから冷笑されたというのに。
子供のいる同僚が低賃金で働いていることを知ると、昇給を訴えろと憤る。
ここで働くことで少しは成長したのか。
と思ったが、最後はやっぱり最低な奴なのだ。
写真はみやこうせい氏。(2021)