ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

マスク

2021-01-30 15:00:02 | 読書
 菊池寛『マスク』



 表紙にマスクをした男のイラストが描かれていて、書店でとても目立っていた。

 頭の真ん中に「菊池寛」の文字。丸メガネの男は著者の似顔絵なのだ。

 帯を外すとマスクも外れる。コミカルなイラストの全貌が見える。

 表紙をめくると、そのイラストと同じ顔をした男の写真が現れる。気弱そうに感じるのは、帯に書かれた「私も、新型ウィルスは怖い。」の文字のせいだろうか。

 
 「スペイン風邪をめぐる小説集」というサブタイトルがついているが、本の半分は関連のわからない歴史小説だ。このラインナップに戸惑う。

 およそ100年前に流行ったスペイン風邪に対する人々の反応が、現代の新型コロナウィルスと似ているよね、という程度の読み方だと物足りない。

 しかし、ここには何かしら参考になるようなことはなく、ただ物哀しさが漂う。


 一番最後の一編「私の日常道徳」だけ、貂明朝で組まれている。

 古めかしいけれど、どことなく可愛らしくもある独特な書体が、「マスク」で感じられた菊池寛の雰囲気に似合っている。


 デザインは木村弥世氏、イラストは茂苅恵氏。(2021)




コメント (2)
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