R・L・スティーヴンソン&ファニー・スティーヴンソン『爆弾魔』
カバーの絵は、右へ90度回して見ると、部屋の床だったところが壁になり、壁に見えていたところが建物の入り口になる。さらに回すと、部屋の中だったところが外になってしまう。不思議な構図だ。
この小説も絵に似ていて、いくつもの物語が縦、横、背面と、思わぬ形で結びついている。
物語の軸になるのは、ロンドンに暮らす3人の青年。
紳士だが生活力がなく貧乏な彼らは、懸賞金のかかった悪党を捕まえるべく冒険をしようと誓い合う。
そしてそれぞれが、普段は取らない行動を選ぶことで、風変わりな経験をしていく。
秘密結社に狙われる女性、テロリストに懐柔される男、魔女が支配する農園、空想か法螺話か、どこまでが真実なのかわからない話が続く。そのどれもがスリルに満ちた冒険で楽しい。
はじまりと同じ、3人が出会ったシガーバーで、物語は幕を閉じる。
面白い話を聞かせてもらった。そんな気分だ。
装画は磯良一氏、装丁は山田英春氏。(2021)