ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

東京の古本屋

2021-12-04 14:30:28 | 読書
 橋本倫史『東京の古本屋』



 何年か経って2020年を振り返るとき、記憶に残る一番大きな出来事は、新型コロナに関連したことだろう。

 店がどこも開いていなかった、誰にも会わなかった、ずっと家にいた。

 そのとき古本屋はどうしていたのだろう。

 
 東京に緊急事態宣言が発出されたとき、古本屋は休業要請の対象だった。


 2019年末から2021年夏まで、10軒の古本屋を訪ねた記録。

 それぞれ3日間、著書はスタッフの一員となって働きながら話を聞く。


 古本屋には、本を読んでのんびり1日が過ごせる仕事という幻想を抱いてしまう。

 そんな安易な考えが打ち砕かれる。

 本を仕入れなくてはいけないし、汚れを落とし、それを売らなくては生活できない。

 コロナ渦でも、シャッターの下りた店の奥で、ネット販売用に入力を続ける店主がいた。


 カバーは、暗い通りの中で灯りのともった古本屋の写真。

 ふらっと立ち寄るように、つい手に取ってしまった本。

 口絵と本文にも写真が豊富に入っている。

 あの頃、この人たちはマスクをしながら働いていたのだ。

 少しいびつな日常であっても、変わらず人がいることに安心する。


 カバー写真は著者、装丁は川名潤氏。(2021)