グアダルーペ・ネッテル『花びらとその他の不穏な物語』
ぼくは○○が好きだ。
人には言えない好きなものは、きっと誰にでもあるだろう。
それが、他人の体の特定の部位だとしたら、なおのこと口には出せない。
少女のまぶたの写真を撮り、「夢見るようなみだらな」ものと感じるプロカメラマンの男。
女性の尿の匂いを嗅ぎ、どんな人なのか想像する男。
この小説集に登場する人のフェティシズムに、嫌悪感を抱く。
気に入った尿の匂いの持ち主を探して、レストランのトイレを巡る男の行動は引いてしまう。
犯罪じゃん、変態!
しかし、これがフェチというもの。
異常な行動なのに、美しく繊細な文章で綴られると、崇高なことのようにも見えてしまう。
こんな小説を愛でるぼくも、フェチに違いない。
でも人には言えない。
○○のことは絶対に。
装画は澤井昌平氏、装丁は桜井雄一郎氏。(2023)