ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

オープン・ウォーター

2023-09-16 19:15:35 | 読書
 ケイレブ・アズマー・ネルソン『オープン・ウォーター』



 ああ、そういうことではないんだね。

 話し相手の表情を見て悟ることがある。

 ぼくの発言は、相手が言おうとしていることとは微妙に違ったのだと。


 この小説が語る真意は、ぼくには本当には理解できないのかもしれない。

 ガーナ出身の黒人がロンドンで暮らすということ。

 受けた差別と、その経験が引き起こす苦しみは。


 でもわかることもある。

 愛する人にさえ言えないこと、愛するゆえに言いにくいこと。

 ぼくは恋愛マスターではないけれど。


 カバーの写真は夕刻のロンドン橋。

 ガラスに映るオレンジ色のライトが優しい。

 帯を外した時の白、穏やかな黄色の文字「Open Water」。

 それらは、ロンドンに行きたいと思わせるくらい魅力的だ。


 繊細で脆く壊れてしまいそうな恋人たちの関係が描かれた物語。

 ときおり垣間見える強さは、愛なのか。


 装丁は鳴田小夜子氏。(2023)