ジョン・スコルジー『怪獣保護協会』
買ってもらったプラモデルの箱を開けるときの興奮。
怪獣の物語を手にして、子どものころのそんな気持ちの昂りを思い出した。
でもこの物語は、怪獣が無闇矢鱈と暴れ回る子ども向けではなかった。
本当は、ぼくは単純な話を読みたかったのかもしれない。
子どもの気分に戻って。
パンデミックの最中、ジェイミーは失職し、フードデリバリー要員になる。
生活のため、仕方なくこなす仕事でしかない。
そんなとき、配達先で再会した知り合いに、思わぬ仕事のオファーを受ける。
それは。
怪獣よ早く出てこい!
心の中で怪獣コールをしながらも、登場人物たちの軽妙な会話に引き込まれる。
ただ、同じ調子で続いてしまうと、少々退屈する。
描写が少なく会話が主体なので、やっと登場した怪獣の造形がわからない。
怪獣好きが自分なりに想像する余地を残したのか、それとも怪獣好きに突っ込まれるのを恐れたのか。
これでは怪獣好きが不満を募らせないのか。
うまく組み立てられなかったプラモデルを前にしたような気分で読み終えた。
装画は開田裕治氏、装丁は日髙祐也氏。(2023)