チャールズ・ブコウスキー『ブコウスキーの酔いどれ紀行』
ちくま文庫のブコウスキー、3冊の中の1冊。
このカバーにも、サヌキナオヤ氏のイラストが入っている。
でも、3冊ともデザインがちょっと違う。
イラストの周囲に配置されたタイトル、著者名の位置が異なっている。
些細なことだが、これが統一された単調さを免れていて、ブコウスキーの反骨心を表しているかのようでもある。
フランス、ドイツの紀行文。
朗読会に呼ばれ、テレビ出演をする。ドイツでは、自分の生まれた家を訪れ、叔父と再会する。
同行したカメラマンのモノクロ写真が多数入っていて、書かれた文章が本当だとわかる。
ここには、おそらく素のブコウスキーがいる。
創作に登場するブコウスキーの分身と、かなり似ていて、いつも飲んだくれている。
嫌いな人間とは喧嘩をする。しかし、好きな人に対しては、「大好き」と言えてしまう素直さがある。
小説の中で垣間見えていた繊細さが、ここでも時折顔を出す。
恐い顔をしたブコウスキーを、少し好きになる。
デザインは加藤賢策氏。(2019)