ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

スクイズ・プレー

2022-10-20 17:02:58 | 読書
 ポール・ベンジャミン『スクイズ・プレー』



 ポール・オースター別名義の小説、幻のデビュー長篇!

 帯でこの驚きの事実を知らなければ、この本を手に取っただろうか。

 でも、帯を外して青のカバーをよく見ると、黒いビル群の中央に黄色の人物が配置された、おしゃれなイラストが入っている。

 中折れ帽をかぶり、コートをはためかせて颯爽と歩く姿は、少し古い時代の探偵物語だと想像がついて、ポール・オースターだと知らなくても手が伸びたかもしれない。


 探偵マックス・クラインは、家出少女の捜索を終え、パリで休暇を取ろうとしていた。

 そこへ元メジャーリーガーから、命を狙われている、調査をしてほしいと依頼がくる。

 誰もが知るスタープレイヤーだった依頼人。

 彼が受け取った脅迫状はとりとめなく、糸口となりそうな情報もない。

 ところが調査を始めた探偵は、知らぬうちに藪をつついてしまったようで、屈強な大男に襲われてしまう。

 腕っぷしは強くないのに、タフで軽口を叩く探偵。

 開けなくていい扉をそのままにできない彼の正義感が、哀愁を誘う。


 装画は柳智之氏、装丁は新潮社装幀室。(2022)