ポール・ベンジャミン『スクイズ・プレー』
ポール・オースター別名義の小説、幻のデビュー長篇!
帯でこの驚きの事実を知らなければ、この本を手に取っただろうか。
でも、帯を外して青のカバーをよく見ると、黒いビル群の中央に黄色の人物が配置された、おしゃれなイラストが入っている。
中折れ帽をかぶり、コートをはためかせて颯爽と歩く姿は、少し古い時代の探偵物語だと想像がついて、ポール・オースターだと知らなくても手が伸びたかもしれない。
探偵マックス・クラインは、家出少女の捜索を終え、パリで休暇を取ろうとしていた。
そこへ元メジャーリーガーから、命を狙われている、調査をしてほしいと依頼がくる。
誰もが知るスタープレイヤーだった依頼人。
彼が受け取った脅迫状はとりとめなく、糸口となりそうな情報もない。
ところが調査を始めた探偵は、知らぬうちに藪をつついてしまったようで、屈強な大男に襲われてしまう。
腕っぷしは強くないのに、タフで軽口を叩く探偵。
開けなくていい扉をそのままにできない彼の正義感が、哀愁を誘う。
装画は柳智之氏、装丁は新潮社装幀室。(2022)