ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

メアリ・ヴェントゥーラと第九王国

2022-10-09 16:09:54 | 読書
 シルヴィア・プラス『メアリ・ヴェントゥーラと第九王国』



 繊細で品のあるカバー。

 不思議なタイトル。

 帯を外すと、知的で少し難解な雰囲気になり、この物語を楽しめるのか、あるいは理解できず苦しむのか、楽しみと不安が半分ずつ。


 8つの短篇集。

 表題作『メアリ・ヴェントゥーラと第九王国』は、列車で旅立つ娘と、彼女を見送る両親がホームで話している場面から始まる。

 発車間近の汽車に乗せようと急かす両親。

 一方娘は、まだ旅立つ気持ちになれないと拒絶する。

 しかし、辛いことなどないと説得されて娘は汽車に乗り込む。

 
 これは人生の岐路に立ち、旅立つ不安を書いているのだろうと気づくのだが、舞台に張り巡らされた見えない糸は、巧妙にぼくの気持ちを不安定にさせる。

 何か違っているのか、読み落としているのかと。

 好きなのに受け入れてもらえない。

 そんな感じに似て、何度も読み返してみる。

 再読するたびに、少しずつ見えるものが変わってくる気がする。

 彼女(著者)の物語を理解するには時間がかかりそうだ。


 写真はKarlis Andzs、装丁は大久保伸子氏。(2022)