シルヴィア・プラス『メアリ・ヴェントゥーラと第九王国』
繊細で品のあるカバー。
不思議なタイトル。
帯を外すと、知的で少し難解な雰囲気になり、この物語を楽しめるのか、あるいは理解できず苦しむのか、楽しみと不安が半分ずつ。
8つの短篇集。
表題作『メアリ・ヴェントゥーラと第九王国』は、列車で旅立つ娘と、彼女を見送る両親がホームで話している場面から始まる。
発車間近の汽車に乗せようと急かす両親。
一方娘は、まだ旅立つ気持ちになれないと拒絶する。
しかし、辛いことなどないと説得されて娘は汽車に乗り込む。
これは人生の岐路に立ち、旅立つ不安を書いているのだろうと気づくのだが、舞台に張り巡らされた見えない糸は、巧妙にぼくの気持ちを不安定にさせる。
何か違っているのか、読み落としているのかと。
好きなのに受け入れてもらえない。
そんな感じに似て、何度も読み返してみる。
再読するたびに、少しずつ見えるものが変わってくる気がする。
彼女(著者)の物語を理解するには時間がかかりそうだ。
写真はKarlis Andzs、装丁は大久保伸子氏。(2022)