つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

戦争は女の顔をしていない。 ~ 大祖国戦争の女性兵士。

2020年02月24日 14時09分44秒 | 手すさびにて候。
ほんの手すさび手慰み。
不定期イラスト連載、第百三十一弾は「赤軍の女性兵士」。

ベラルーシ出身のノーベル賞受賞作家「スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ」。
彼女の処女作が「戦争は女の顔をしていない」。
雑誌記者をしていた著者が、独ソ戦に従軍した女性たち、
500人以上から聞き取り取材をした声をまとめた、ルポルタージュである。
「岩波書店」から刊行され、現在「KADOKAWA」漫画版が進行中。
ご存知の方は少なくないと思う。

作品中に登場する人物の故郷は、
今は無き大国「ソビエト社会主義共和国連邦」。
その建国から僅か20年余りで迎えた危機、第二次世界大戦に於いては、
100万人を超える女性たちが参戦した。
後方支援の役回りだけではない。
看護師、軍医、砲兵、狙撃兵、戦車兵、飛行兵として、
驚くことに徴兵ではなく「志願して」最前線に立ったのである。

何故、世界史上でも特異なケースが生まれたのか。
要因の一つは、当時の赤軍(ソ連軍)が置かれた状況だと思う。

日露戦争を戦った頃の帝政ロシア軍は、革命で解体。
1930年代の「スターリン大粛清」により、優秀な指揮官は消失。
軍事のプロが不在で、近代化に失敗した組織では、
機械化したドイツ軍に太刀打ちできず、追い詰められてゆく。
対抗するには、人海戦術に頼らざるを得ず、
練度不足、装備不足のまま戦場に送り込まれた兵士の屍の山は大きくなるばかり。
最早、男だけでは回らない。
・・・そんな背景があったのではないだろうか。

果たして、女性たちは奮闘した。
10機以上を撃墜したエースパイロットは、
ドイツ空軍から「スターリングラードの白薔薇」と呼ばれ畏れられた。
夜間爆撃隊「夜の魔女」も大戦果を上げた。
戦局の転換点になった「スターリングラード攻防戦」では、
スナイパーが、多くのフリッツ(※)の額を撃ち抜いた。

また、彼女たちは味方とも戦った。

軍隊という男社会との反目。
友軍に懲罰を課す首脳部のあざといやり口。
強姦・略奪など、目を覆うイワン共(※)の蛮行。
それら耐えがたい苦痛を乗り越え勝利し、復員してみると、
「戦地妻」と揶揄され、悪意や差別、好奇にさらされた。
敵とは言え、人を殺めた罪悪感にも苦しんだ。

そして、女性たちは、沈黙するようになった。

「戦争は女の顔をしていない」は、
永久凍土の下に封印していた過去を掘り起す、貴重な記録である。

※追記
 イラスト右上、小さなグラスの中身は「ウオツカ」。
 戦時中は前線にもウオツカが支給された。
 一日の戦闘を終え、束の間の休息の一コマ。
※補足
 フリッツはドイツ兵、イワンはソ連兵(男)の総称。

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